吉田多美子さんは重度の認知症で、施設で暮らしている。夫の晋悟さんは面会を続けてきたが、コロナ禍で制限がもうけられ、窓越しでの面会が許されたのは約150日ぶりだった。自宅で晋悟さんは多美子さんがつけていた日記を見返し、同じことを繰り返す妻に対する苛立ちから自宅を飛び出したことを思い出した。多美子さんは「お気の毒」と記していた。その後、施設では月に2回、同じ部屋で面会できるようになったが、多美子さんは体重が減り、自力歩行もできなくなっていた。差し伸べた手を振り払おうとすることもあった。それでも、晋悟さんは「あなたが忘れても、お父さんはあなたのことを忘れないからね」などと言葉をかけた。現在、施設の庭で散歩できるようになり、2人は3年ぶりに同じ景色を見て過ごしている。