高齢者が増えて需要が高まる在宅医療について、国は対応を強化する方針だが、主に民間が担う訪問看護の拠点施設は地域によって数にばらつきがある。そうした中、サービスを維持しようとする茨城県の訪問看護師を取材。茨城県北部。山あいの地域に車を走らせるのは、訪問看護師の大川総枝さん。自宅で療養を続ける患者を定期的に訪問し、主治医の指示のもと経過を観察して薬の管理なども行う。訪問看護師を派遣するのは病院のほか、訪問看護ステーションと呼ばれる施設が拠点となる。国が在宅医療を推進する方針を示す中で、訪問看護ステーションはここ5年間でおよそ1.5倍に増えている。茨城県那珂市には、大川さんが所属するステーションを含めて、合計8か所ある。しかし、その隣の常陸大宮市には1か所しかない。山間部のように訪問に時間がかかる地域では訪問看護が事業として成り立ちにくい実情がある。今、大川さんは常陸大宮市の山あいからの依頼も多く引き受けている。片道1時間ほどかかり、負担する経費も大きくなる。大川さんは、地域によって訪問看護ステーションの数に格差がある現状の中で、できるかぎりのことをしようとしている。さらに、大川さんは災害時などでも訪問を継続するため周辺のステーションと連携する協定を結ぼうとしている。訪問看護はステーションと利用者が契約を交わして行う。災害などで訪問できなくなった場合、契約していないステーションからの訪問はできない。大川さんたちは、こうした場合に備えてほかのステーションと協定を結んでおき、訪問を継続する仕組みを検討している。住み慣れた自宅で安心して療養できる環境をいかに整えるか。訪問看護が大きな鍵を握っている。