塚本監督の新作映画「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」主人公のアレン・ネルソンは貧困などから抜け出すために軍に入隊しベトナム戦争でためらいなく殺戮する兵士となり生還したがPTSDに苦しみ戦争が加害者側にもたらす深刻な影響・葛藤が描かれている。映画で「加害者視点」にこだわった塚本監督は「戦争の恐ろしさは戦場に行って死ぬのがいちばん怖いものとして捉えがち。さらに怖いのは戦争から帰ってきたとしても多くの人を殺していて優しくて平和的な考えの人でも戦場に行くとそういう場になって殺意みたいなものが起こってしまうらしく戻ってきた日常とやってきたこととのギャップで精神が難しく危険なことになるという事実があまり語られていないので被害と加害を両方とも描かないと戦争の怖さを描いたことにならないのではないかと」などとした。制作を決意した理由はアレン・ネルソンさんが自身の体験を綴った本との出会いがきっかけだった。アレン・ネルソンさんはベトナム戦争での体験を赤裸々に綴っていて、米国はベトナムに50万人以上の兵士を駐留させ泥沼の戦いを繰り広げたがアレンさんは最前線にいた。映画では加害の現実の表現としてベトナム人殺害シーンが繰り返される。塚本監督は映画「野火」ではフィリピンで日本兵が極限状態になるさまを主人公視点とカメラで一体化する手法で描いたが今作でもアレンさんの人生を追うことにフォーカスしているので戦場で殺戮しかしていないのでベトナムの方々のことを描くことはできないとした。帰還後のPTSDに苦しみに表現にもこだわり「戦場で恐ろしい加害をして帰ったら自分の家族には優しくしたいと思うのが心情だと思うが家族にも異常な暴力が止まらない激情が起こってしまう。戦争が一回始まるとかたち自体終わっても暴力として心に残ったのは連鎖で受け継がれてしまうので始めてはいけないと改めて思った」とした。沖縄の米軍基地で訓練を受けたネルソンさんは日本に強い思いを持っていて亡くなる61歳までの10年の間に日本で若者たちに1200回以上の講演を行い反戦を訴えた。塚本監督は戦争映画に力を入れる理由は「ある時期から日本がだんだん戦争のできる国というふうに急激にかじを取っているように感じたので怖くて早く作らなければと思ったのが「野火」、10年以上たって心配は強くなっていくのでアレンさんが語る代わりに映画にならないかと思った」とした。毎年8月「野火」アンコール上映を全国の映画館で行い戦争を恐ろしさを伝えている。映画で残ることについて「薄れずに皆さんの記憶によみがえらすことができるので折々に触れて観ていただきたい」などとした。
