ある町工場で行われている商品の開発会議、グラスのデザインや手触りをチェックしているようだが、使用されている素材にある秘密が。実はガラスではなくゴムからできた割れないグラス。ユニークな商品開発の裏側にはものづくりの誇りを目で見て、手で触れるようにしたいという熱い思いが込められていた。創業80年以上、大阪八尾市にある町工場「錦城護謨」、他ができないならうちでやってやろうをモットーに年間5000種類ほどのゴム製品を製造。完成品メーカーから炊飯器のパッキンやスイミングキャップなどゴム部品の製造を請け負ってきた。ただ、高い技術力はあっても仕事に誇りがもてない社員もいた。長年培ってきたゴムのノウハウやスタッフの技術をさらに生かしたいという思いで新たに自社ブランドを立ち上げた。それがゴム素材の無限の可能性を追求し高いデザイン性と機能性を両立させたグラス。素材にはガラスと同等の透明度を持つシリコーンゴムを使用。触ってみるとぐにゃっと曲がったり、ゴムなので落としても割れない他、電子レンジで飲み物を温めることも。開発担当者はゴム素材は変幻自在で無限の可能性を秘めていると考えている。自社ブランドをきっかけに錦城護謨のことを知り、働き始めたスタッフの存在も。ものづくりに誇りを持てる機会が増えることで離職率の低下にもつながっている。さらに世界最大級の国際見本市にも出展。多くのバイヤーから「軽い、持ちやすい、割れない」などの高評価を得ることができ海外での販路拡大も目指していく。