マツダは世界で唯一ロータリーエンジンを実用化させた。2023年、マツダが発表した車が話題を呼んだ。搭載するエンジンがロータリーエンジンだった。マツダはかつてスポーツカーを中心に売れに売れた。しかし90年代景気は低迷。さらに環境問題が注目され燃費の悪いロータリー車は売れなくなった。社内からもロータリーの開発継続に疑問の声が上がり始めた。2012年、ロータリー車の販売が終了した。だが技術者たちは諦めなかった。清水律治は技術者人生の全てをロータリーにささげてきた。そしてロータリーの回転で発電機を効率よく回すことができると思いついた。ピストンが上下に動く通常のエンジンと異なりロータリーは回転する。この原理を応用すれば発電機を効率的に回すことができる。発電機と電気自動車を組み合わせればロータリーの生き残りを図れるのではないか。しかしこのエンジンは長年スポーツカー向けに開発されてきた。技術者の中でも意見が分かれた。ロータリーに憧れ入社した緒方佳典は複雑だった。一方奮い立った者もいた。2017年、ロータリーチームは電気自動車向けの発電機の開発を正式にスタートさせた。しかし大きな壁が立ちはだかった。長年の弱点である燃費と排ガスの問題を解決しなければならない。任されたのは日高弘順。社内のある部署に協力を求めた。これまであまり交流がなかった通常エンジンの開発チームで優れた燃費改善技術を持っていた。排ガス処理のスペシャリスト、長谷川裕一が協力を申し出た。かつては赤字のロータリー開発に疑問を感じていた。6年に及ぶ試行錯誤の末燃費を25%改善、排ガスもクリーンにすることに成功した。2023年11月、ロータリーエンジンを搭載した電気自動車が世に送り出された。しかし会社は一枚岩になったわけではない。社内報には今も疑問の声が寄せられている。社長は「いろんな意見があっていい。意見を叩かせながら前に進めることが会社としてはいい。私としてはロマンと、そろばん両方やらないといけない立場」などと話した。