3月に都内で開かれたビジネスマンたちの会合では、脱炭素について議論がされた。脱炭素社会の実現を目指す民間企業の集まりのJCLP は「脱炭素社会」への移行をビジネス視点でとらえる日本独自の企業グループで、230社が加盟し総売上は130兆円、従業員総数は300万人。予想を上回るスピードで進む温暖化にビジネス界は危機感をつのらせている。3月20日に発表された国連の新たな報告書では気候変動は人類の幸福と地球の健康に対する脅威であるとし、この10年間に行う選択と対策は数千年先まで影響する。世界の平均気温の上昇は産業革命前から1.5度を超えれば異常気象が頻発する。2℃以上温暖化が暴走するリスクが高まる。2050年までにCO2 を実質ゼロにする以外解決策はないという。脱炭素対策の最前線を探るためにJCLPは11月に開かれたCOP27で独自の視察団を派遣した。ロシアのウクライナ侵攻でエネルギー危機が発生しているのにも関わらず、世界は安価な再エネの転換が急ピッチで進んでいる。日本は未だに温暖化対策を後退させた国に与えられる化石賞を受賞するなどしている。2030年温室効果ガスを46%削減する日本は、2月にグリーントランスフォーメーションの閣議決定を行い今後10年で脱炭素に官民で150兆円投資する。科学的知見に基づいて脱炭素のロードマップなしに産業界は生き残れない。
2022年11月にエジプトのシャルム・エル・シェイクでは気候変動対策国連の会のCOP27
が開催した。JCLPのCOP27視察団は11月9日から4日間現地を訪問した。脱炭素に取り組む世界企業や専門家から生の最新情報を得るのが目的。COPでは200の国や機関が集結しパリ協定の実施について話し、大洪水が発生したパキスタンのシャリフ首相が訴えた。COP27の最大のテーマは気候変動に脆弱な発展途上国を支援するための損失と損害の基金を作れるかどうか。そして気候変動の被害を防ぐために各国の削減目標を強化できるかどうか。JCLPの視察団に参加したのは流通大手やメガバンク企業など11社。初日にまず意見交換したのは医学雑誌のランセットのチーム。その事務局長のマリーナ・ロマネッロさんは、化石燃料は世界の健康の悪影響を増大させていると主張。ランセットは2015年から化石燃料における大気汚染など、気候変動と健康に関する特別リポートを発行してきた。すでに熱中症の危険から労働時間が大きく減りビジネスに影響が出ていることも明らかになっている。JCLPの共同代表の岩崎さんは日本では聞けないような気候変動の危機を感じ取れたという。この日JAPANパビリオンでは、脱炭素への推進的な取り組みを行っている北欧の家具メーカーなどを交えて議論が行なわれた。
司会を務めたのはJCLP共同代表の三宅香さん。長年イオングループの環境責任者を務め、2017年にはドイツで開催したCOP23にも参加した。2020年には金融界に転じ、国連のグテーレス事務総長直轄のハイレベル専門家グループの日本人唯一のメンバーとして活躍している。COP27でビジネス界にむけた国連のガイドラインを新たに発表。大事なのは2050年のカーボンニュートラル宣言だけではないという。脱炭素へのロードマップをつくる上でかかせないのは鉄鋼、化学、セメント、航空、海運で膨大なCO2 を排出し、世界の排出量の3割をしめている。こうした分野の脱炭素化の支援を行っているシンクタンクのエネルギー移行委員会は、議長のターナーさんがJCLPと対談した。鉄鋼業の脱炭素化について話し合ったが、鉄鋼は脱炭素化がとりわけ難しく、石炭からつくるコークスの代わりに水素を使う新しい技術があり、実際にそれを見たという。その視察したというスウェーデンの鉄鋼メーカーは、政府の補助を受け脱炭素型のシールをつくる新しい製鉄所試運転を行っている。従来の製鉄所では原料の鉄鉱石から高炉を使って鉄を生み出す過程で石炭からつくるコークスを用いるために、CO2の排出が極めて多かった。この会社ではコークスの代わりいCO2を排出しない水素にし、取り出した鉄を再エネを電源とした電炉にし粗鋼に。2020年には、SSABは世界で初めて化石燃料フリースチールの生産に成功した。連携している会社の協力で、鉄鉱石を掘るときや製鉄所で使う電力をすべて再エネにしたり、2026年には商業レベルの操業を始める予定。
化石燃料フリースチールは通常の鉄鋼よりも割高で、鉄鋼の売り先である自動車メーカーの協力が成功のカギを握った。その協力をボルボグループが担い、コストはかかっても自社を選んでくれるということにSSABは自信をもったという。1991年に炭素税を導入したスウェーデンは経済成長をしながらCO2を削減してきた。脱炭素への転換には炭素を減らしたほうが得をする仕組みのカーボンプライシングが重要だという。EUの排出量取引では現在CO2の1トンあたり13000を超える価格がつく。また国境炭素税も2023年10月から義務化され、CO2 削減がなされていない一部の製品の輸入には高いペナルティが課されるという。COP27で日本は、温暖化対策を後退させた国に与えられる不名誉な賞を受賞し、未だに石炭火力などの化石燃料に対し、世界で一番多くの公的資金を拠出していることが理由。その金額は3年間で4兆円以上に。国内では、東日本大震災後に火力発電への依存が強まり、現在も火力発電が70%以上をしめる。日本の再生可能エネルギーの割合は22%を超えたが、2030年の導入目標は、36から38%にすぎない。ドイツではすでに48%を超えているが、ウクライナ危機もあって2030年の目標を80%以上に高めた。COP27の期間中に世界各地から集まった人々は化石燃料からの脱却を呼びかけた。特に若者世代は、1.5℃目標に整合していない温暖化対策を批判している。国連では先進国は2030年までに石炭火力発電を廃止するよう求めている。日本を燃やす時にCO2 を排出しない水素やアンモニアを天然ガスなどに混ぜて石炭を燃やすやり方を推奨。アジアにも展開しようとしている。一方で、こうした日本の方針に懸念を示すリポートもあり、水素やアンモニアと石炭の混焼技術のような化石燃料ベースの移行技術の融資はASEAN諸国のネットゼロ目標を妨げる可能性があるという見方も。現在G7の中で石炭火力をいつまでに廃止するかを宣言していないのは日本のみ。
この日、エネルギー分野の専門家とJCLPメンバーとの対話が行なわれた。イギリス政府や、国際エネルギー機関などの委員を歴任してきたリーブライクさん。この日のテーマは水素で、脱炭素化にかかせない水素。しかし再エネからつくるグリーン水素なのが大事でその量には限りがあるという。水素は何でもできるからと言って、効率の悪い使い方をするのは理にかなわないという。リーブライクさんは、水素を使うには優先順位があるとして水素のはしごと呼ばれる図を説明。水素は非常にかさばり、変換していく過程でエネルギーロスが生じて再エネによる電力やバッテリーなど代替可能な分野に貴重な水素を使うのはコストも含めて得策ではないという。世界の潮流の速さに圧倒されたJCLPの視察団。COP27が閉幕し、損失と損害基金の設立など、歴史的な成果もあったが各国の削減目標を強化することには失敗。課題はCOP28へと先送りされた。
2023年には日本はG7の議長国を務める。4月には札幌で機構エネルギー環境大臣会合、5月には広島でサミットが開催する。COP27から帰国した三宅さんは本業である金融の世界で日本産業界の脱炭素に向けて何ができるのか、模索を続けている。1.5℃目標は2030年までに世界全全体で59兆ドル。日本円で7700兆円が必要になるという。だが金融機関には、単に資金を投じるだけでなく産業同士をつなげる大事な役割があるという。三井住友トラスト・ホールディングスの高倉透社長は脱炭素を目指す銀行の世界的なアライアンスにも加盟している。ロシアのウクライナ侵攻から一年が経過し、日本では、エネルギー危機の影響でヨーロッパでも石炭回帰がおこり、脱炭素が遅れるとの声が聞こえていた。しかし、驚くべき最新データが発表され、2020年にEUでは風力と太陽光が大きくのびて天然ガスを抜いた。一時期の石炭への揺り戻しも解消しつつあるという。ロシアの天然ガスへの依存が安全保障上のリスクだと痛感したヨーロッパでは、再エネ転換へのスピードがむしろ強まった。また、電気代の高騰で市民も省エネに努めたという。背景にはヨーロッパを襲った歴史的間伐など厳しさを増す気候危機の進行もあった。2022年にはグリーンランドなどで氷の大規模な融解が進んだ。水問題のシンポジウムで来日した世界気象機関のペッテリ・ターラスは衝撃的な最新情報を伝えた。温暖化の進行で、仮に気温上昇を1.5度に抑えたとしても今後2000年の間に2mから3mの海面上昇が続く厳しい見通しだという。
3mの海面上昇では太平洋の島国など海抜の低い国々に水没に繋がりかねない。日本も例外ではなく、海面が3m上昇し水没する場所が出てくる。東京や名古屋、大阪などの湾岸は極めてリスクが高い。CO2 の大量排出が続けば海面が2150年に5m上昇するリスクも排除できない。JCLPの共同代表を務める三宅さんは一人でも多く気候変動の危機感を伝えようとオンラインでの会合を重ねた。この日、企業向けのオンラインセミナーで若者世代のNPOと対談した。
今世界中の企業がしのぎを削っているのは洋上風力発電。3月の国際展示会では、至る所で商談が行なわれた。COP27で面談した企業も含め世界のトップランナーが出展。日本に国産のメーカーはないが風力発電にむいた海域が多く日本の可能性に多くの期待が寄せられる。JCLPの共同代表を務める建設会社は日本で初めて浮体式という洋上風力発電を開発。長崎県五島市沖で稼働中の2メガワット級のもので、新たに8基を導入。日本では浮体式の稼働が注目される。完成すれば18メガワットの発電所に。この日開かれたミーティングでは、課題は、風車の大型化。今世界では、一基で15メガワットを超える次世代の大型風車が主流。1ギガワットをつくる風車の規模の事業が進められている。世界の海では、中国やアメリカを含め洋上風力発電の建設が急ピッチで進められている。島国のイギリスでは洋上風力発電の導入目標を2030年に50ギガワットに。日本では2040年に30~45ギガワットの導入目標を掲げているがそのスピードとスケールには大きな違いがある。3月に行なわれた国際シンポジウムでは洋上風力発電はアジアの途上国でも加速しているとの発言が相次いだ。日本風力発電協会の代表理事は日本政府が天然ガスを使った発電に20年間収入保障をするというニュースに驚いたという。
COP27で学んだことを新しいビジネスにいかそうとしている企業がある。3000人近いデジタルクリエイターが働くIT企業は社員も若く気候変動に関心があるという。メンバーズの西澤さんはお客と一緒に脱炭素ができる領域を見つけて事業化していきたいとした。会社の中には脱炭素を専門に扱う新しい部署を設立。この日、キックオフミーティングが開催。この会社が行った消費者の意識調査では、日本で気候変動に関心があると答えたのは7割。しかし環境に配慮した商品を購入しているなどと答えた消費者は3割に満たない。国民の意識を変えていくためには何ができるか?と議論を重ねた。COP27でランセットに刺激をうけたJCLPの共同代表の岩崎さんは、JCLPとして気候変動と健康をテーマに、超党派の国会議員との勉強会を開くことにし、事前の打ち合わせが行なわれた。国会議員に自分事にしてもらえるか、注目したのは感染症。
3月14日にJCLP主催の超党派の国会議員との勉強会が開催。岩崎さんは準備を重ね、JCLPの共同代表として登壇した。与野党40人以上を目の前に温暖化による感染症などのリスクを訴えた。3月20日に国連は極めて重要な報告書を発表した。世界の科学者の集まりのIPCCが気候変動に関する政府間パネルがまとめた統合報告書では現在の対策では削減量は足りずに近い将来に1.5度に達してしまうという。1.5度に抑えるためには2025年までに温室効果ガスをピークアウトさせて2035年までに60%削減する必要があるという。今が正念場になるという。ハンス・J・シェルンフーバーはこれは科学者からの最終警告だと述べた。
2022年11月にエジプトのシャルム・エル・シェイクでは気候変動対策国連の会のCOP27
が開催した。JCLPのCOP27視察団は11月9日から4日間現地を訪問した。脱炭素に取り組む世界企業や専門家から生の最新情報を得るのが目的。COPでは200の国や機関が集結しパリ協定の実施について話し、大洪水が発生したパキスタンのシャリフ首相が訴えた。COP27の最大のテーマは気候変動に脆弱な発展途上国を支援するための損失と損害の基金を作れるかどうか。そして気候変動の被害を防ぐために各国の削減目標を強化できるかどうか。JCLPの視察団に参加したのは流通大手やメガバンク企業など11社。初日にまず意見交換したのは医学雑誌のランセットのチーム。その事務局長のマリーナ・ロマネッロさんは、化石燃料は世界の健康の悪影響を増大させていると主張。ランセットは2015年から化石燃料における大気汚染など、気候変動と健康に関する特別リポートを発行してきた。すでに熱中症の危険から労働時間が大きく減りビジネスに影響が出ていることも明らかになっている。JCLPの共同代表の岩崎さんは日本では聞けないような気候変動の危機を感じ取れたという。この日JAPANパビリオンでは、脱炭素への推進的な取り組みを行っている北欧の家具メーカーなどを交えて議論が行なわれた。
司会を務めたのはJCLP共同代表の三宅香さん。長年イオングループの環境責任者を務め、2017年にはドイツで開催したCOP23にも参加した。2020年には金融界に転じ、国連のグテーレス事務総長直轄のハイレベル専門家グループの日本人唯一のメンバーとして活躍している。COP27でビジネス界にむけた国連のガイドラインを新たに発表。大事なのは2050年のカーボンニュートラル宣言だけではないという。脱炭素へのロードマップをつくる上でかかせないのは鉄鋼、化学、セメント、航空、海運で膨大なCO2 を排出し、世界の排出量の3割をしめている。こうした分野の脱炭素化の支援を行っているシンクタンクのエネルギー移行委員会は、議長のターナーさんがJCLPと対談した。鉄鋼業の脱炭素化について話し合ったが、鉄鋼は脱炭素化がとりわけ難しく、石炭からつくるコークスの代わりに水素を使う新しい技術があり、実際にそれを見たという。その視察したというスウェーデンの鉄鋼メーカーは、政府の補助を受け脱炭素型のシールをつくる新しい製鉄所試運転を行っている。従来の製鉄所では原料の鉄鉱石から高炉を使って鉄を生み出す過程で石炭からつくるコークスを用いるために、CO2の排出が極めて多かった。この会社ではコークスの代わりいCO2を排出しない水素にし、取り出した鉄を再エネを電源とした電炉にし粗鋼に。2020年には、SSABは世界で初めて化石燃料フリースチールの生産に成功した。連携している会社の協力で、鉄鉱石を掘るときや製鉄所で使う電力をすべて再エネにしたり、2026年には商業レベルの操業を始める予定。
化石燃料フリースチールは通常の鉄鋼よりも割高で、鉄鋼の売り先である自動車メーカーの協力が成功のカギを握った。その協力をボルボグループが担い、コストはかかっても自社を選んでくれるということにSSABは自信をもったという。1991年に炭素税を導入したスウェーデンは経済成長をしながらCO2を削減してきた。脱炭素への転換には炭素を減らしたほうが得をする仕組みのカーボンプライシングが重要だという。EUの排出量取引では現在CO2の1トンあたり13000を超える価格がつく。また国境炭素税も2023年10月から義務化され、CO2 削減がなされていない一部の製品の輸入には高いペナルティが課されるという。COP27で日本は、温暖化対策を後退させた国に与えられる不名誉な賞を受賞し、未だに石炭火力などの化石燃料に対し、世界で一番多くの公的資金を拠出していることが理由。その金額は3年間で4兆円以上に。国内では、東日本大震災後に火力発電への依存が強まり、現在も火力発電が70%以上をしめる。日本の再生可能エネルギーの割合は22%を超えたが、2030年の導入目標は、36から38%にすぎない。ドイツではすでに48%を超えているが、ウクライナ危機もあって2030年の目標を80%以上に高めた。COP27の期間中に世界各地から集まった人々は化石燃料からの脱却を呼びかけた。特に若者世代は、1.5℃目標に整合していない温暖化対策を批判している。国連では先進国は2030年までに石炭火力発電を廃止するよう求めている。日本を燃やす時にCO2 を排出しない水素やアンモニアを天然ガスなどに混ぜて石炭を燃やすやり方を推奨。アジアにも展開しようとしている。一方で、こうした日本の方針に懸念を示すリポートもあり、水素やアンモニアと石炭の混焼技術のような化石燃料ベースの移行技術の融資はASEAN諸国のネットゼロ目標を妨げる可能性があるという見方も。現在G7の中で石炭火力をいつまでに廃止するかを宣言していないのは日本のみ。
この日、エネルギー分野の専門家とJCLPメンバーとの対話が行なわれた。イギリス政府や、国際エネルギー機関などの委員を歴任してきたリーブライクさん。この日のテーマは水素で、脱炭素化にかかせない水素。しかし再エネからつくるグリーン水素なのが大事でその量には限りがあるという。水素は何でもできるからと言って、効率の悪い使い方をするのは理にかなわないという。リーブライクさんは、水素を使うには優先順位があるとして水素のはしごと呼ばれる図を説明。水素は非常にかさばり、変換していく過程でエネルギーロスが生じて再エネによる電力やバッテリーなど代替可能な分野に貴重な水素を使うのはコストも含めて得策ではないという。世界の潮流の速さに圧倒されたJCLPの視察団。COP27が閉幕し、損失と損害基金の設立など、歴史的な成果もあったが各国の削減目標を強化することには失敗。課題はCOP28へと先送りされた。
2023年には日本はG7の議長国を務める。4月には札幌で機構エネルギー環境大臣会合、5月には広島でサミットが開催する。COP27から帰国した三宅さんは本業である金融の世界で日本産業界の脱炭素に向けて何ができるのか、模索を続けている。1.5℃目標は2030年までに世界全全体で59兆ドル。日本円で7700兆円が必要になるという。だが金融機関には、単に資金を投じるだけでなく産業同士をつなげる大事な役割があるという。三井住友トラスト・ホールディングスの高倉透社長は脱炭素を目指す銀行の世界的なアライアンスにも加盟している。ロシアのウクライナ侵攻から一年が経過し、日本では、エネルギー危機の影響でヨーロッパでも石炭回帰がおこり、脱炭素が遅れるとの声が聞こえていた。しかし、驚くべき最新データが発表され、2020年にEUでは風力と太陽光が大きくのびて天然ガスを抜いた。一時期の石炭への揺り戻しも解消しつつあるという。ロシアの天然ガスへの依存が安全保障上のリスクだと痛感したヨーロッパでは、再エネ転換へのスピードがむしろ強まった。また、電気代の高騰で市民も省エネに努めたという。背景にはヨーロッパを襲った歴史的間伐など厳しさを増す気候危機の進行もあった。2022年にはグリーンランドなどで氷の大規模な融解が進んだ。水問題のシンポジウムで来日した世界気象機関のペッテリ・ターラスは衝撃的な最新情報を伝えた。温暖化の進行で、仮に気温上昇を1.5度に抑えたとしても今後2000年の間に2mから3mの海面上昇が続く厳しい見通しだという。
3mの海面上昇では太平洋の島国など海抜の低い国々に水没に繋がりかねない。日本も例外ではなく、海面が3m上昇し水没する場所が出てくる。東京や名古屋、大阪などの湾岸は極めてリスクが高い。CO2 の大量排出が続けば海面が2150年に5m上昇するリスクも排除できない。JCLPの共同代表を務める三宅さんは一人でも多く気候変動の危機感を伝えようとオンラインでの会合を重ねた。この日、企業向けのオンラインセミナーで若者世代のNPOと対談した。
今世界中の企業がしのぎを削っているのは洋上風力発電。3月の国際展示会では、至る所で商談が行なわれた。COP27で面談した企業も含め世界のトップランナーが出展。日本に国産のメーカーはないが風力発電にむいた海域が多く日本の可能性に多くの期待が寄せられる。JCLPの共同代表を務める建設会社は日本で初めて浮体式という洋上風力発電を開発。長崎県五島市沖で稼働中の2メガワット級のもので、新たに8基を導入。日本では浮体式の稼働が注目される。完成すれば18メガワットの発電所に。この日開かれたミーティングでは、課題は、風車の大型化。今世界では、一基で15メガワットを超える次世代の大型風車が主流。1ギガワットをつくる風車の規模の事業が進められている。世界の海では、中国やアメリカを含め洋上風力発電の建設が急ピッチで進められている。島国のイギリスでは洋上風力発電の導入目標を2030年に50ギガワットに。日本では2040年に30~45ギガワットの導入目標を掲げているがそのスピードとスケールには大きな違いがある。3月に行なわれた国際シンポジウムでは洋上風力発電はアジアの途上国でも加速しているとの発言が相次いだ。日本風力発電協会の代表理事は日本政府が天然ガスを使った発電に20年間収入保障をするというニュースに驚いたという。
COP27で学んだことを新しいビジネスにいかそうとしている企業がある。3000人近いデジタルクリエイターが働くIT企業は社員も若く気候変動に関心があるという。メンバーズの西澤さんはお客と一緒に脱炭素ができる領域を見つけて事業化していきたいとした。会社の中には脱炭素を専門に扱う新しい部署を設立。この日、キックオフミーティングが開催。この会社が行った消費者の意識調査では、日本で気候変動に関心があると答えたのは7割。しかし環境に配慮した商品を購入しているなどと答えた消費者は3割に満たない。国民の意識を変えていくためには何ができるか?と議論を重ねた。COP27でランセットに刺激をうけたJCLPの共同代表の岩崎さんは、JCLPとして気候変動と健康をテーマに、超党派の国会議員との勉強会を開くことにし、事前の打ち合わせが行なわれた。国会議員に自分事にしてもらえるか、注目したのは感染症。
3月14日にJCLP主催の超党派の国会議員との勉強会が開催。岩崎さんは準備を重ね、JCLPの共同代表として登壇した。与野党40人以上を目の前に温暖化による感染症などのリスクを訴えた。3月20日に国連は極めて重要な報告書を発表した。世界の科学者の集まりのIPCCが気候変動に関する政府間パネルがまとめた統合報告書では現在の対策では削減量は足りずに近い将来に1.5度に達してしまうという。1.5度に抑えるためには2025年までに温室効果ガスをピークアウトさせて2035年までに60%削減する必要があるという。今が正念場になるという。ハンス・J・シェルンフーバーはこれは科学者からの最終警告だと述べた。