津屋尚解説委員が解説。ネット社会はもちろん、経済活動、様々な国際的なやり取りなど、現代の様々営みにとって海底ケーブルは不可欠な存在。通信ケーブルを海底に下ろす作業の映像を紹介。専用の大型船が何か月もかけて、長さ数千kmものケーブルを深い海の底まで下ろしていく。ダイバーも作業に加わる。海底ケーブルの模型の紹介。光ファイバーケーブルを通して、大容量のデータがものすごい速度で世界を駆け巡る。海底ケーブルは世界中に張り巡らされており、総延長は150万km(地球37周分)にも及ぶ。インターネット、電話、放送、国際的な金融取引、軍事利用もされている。世界で交わされる通信には人工衛星経由もあるが、95%が海底ケーブル経由。島国の日本の場合、99%の通信を海底ケーブルに依存している。海底ケーブルが切れてしまうことがある。世界では年間150件程の切断や破損が起きており、日本周辺でも毎年10件前後起きている。原因で最も多いのは意図しない事故。具体的には漁船の底引き網などがケーブルに引っ掛かったり、大型船の錨が引っ掛かったりするケース。もう1つは大地震などの自然災害。頻繁に起きるものではないが、一度起きてしまえば影響は甚大。東日本大震災でも、多くの海底ケーブルが切断された。2年前、南太平洋で起きた海底火山の噴火では、島国トンガの海底ケーブルが切れて通信が途絶し、トンガは島全体が孤立状態になってしまった。補修作業は切れたケーブルを海底からそれぞれフックで引っ掛けて船の上に引き揚げる。そして破損部分を新しいものに交換して、また海底に沈めるという作業。時には水深数千mの海底から引き揚げることもある。
海底ケーブルの破損には原因不明のものもある。例えば、去年2月の台湾での事例。台湾の離島・馬祖島では、海底ケーブル2本が切れて島の通信が途絶状態になった。中国の漁船と貨物船が通過した際に切れたことは分かっているが、これが偶然なのか意図的な切断だったのかははっきりしていない。しかし、台湾政府は“有事の際にはケーブルが意図的に切断される事態が十分に想定される”として、バックアップとして衛星通信を強化するなど対策を急いでいる。日本国内では今のところ海底ケーブルの意図的な破壊が確認されたという事例はないが万一、起きれば深刻な影響が懸念される。大規模な災害を考えると、日本は海底ケーブルのルートが太平洋側に集中しているという問題がある。政府は日本海側などに分散化する計画をしている。一方、意図的な破壊に対しては海底ケーブルのほとんどは民間の所有物のため、対策はどうしても企業任せになっているというのが実情。特に問題が指摘されているのは、海底ケーブルが陸上に揚がる地点「陸揚げ局」の防護体制がぜい弱なこと。数多くの海底ケーブルが太平洋側の特定の場所に集中して陸揚げされているうえに、その場所は公開もされている。攻撃のターゲットになりかねないと安全保障の専門家は指摘している。
欧米の多くは安全保障の観点から海底ケーブルの防護を強化している。例えば米国は、海底ケーブルは国の安全に直結する重要インフラと位置づけて、海底ケーブルの計画に政府が関与することもある。陸揚げ局などはおおまかな位置が公開されているが、詳細な情報は原則、公開していない。また、英国は海中を監視する特殊な船を建造し、海底ケーブルを守る意思を内外に示している。安全保障と海底ケーブルの問題に詳しい慶應義塾大学の土屋大洋教授は「企業任せの日本の対策には限界がある。民間による防護のコストを国が負担する仕組みを検討すべきではないか」と話している。通信の命綱である海底ケーブルが途絶する影響の大きさを考えれば、その対策のため国の役割というのも重要。そして国を超えた協力もますます重要になってくる。
海底ケーブルの破損には原因不明のものもある。例えば、去年2月の台湾での事例。台湾の離島・馬祖島では、海底ケーブル2本が切れて島の通信が途絶状態になった。中国の漁船と貨物船が通過した際に切れたことは分かっているが、これが偶然なのか意図的な切断だったのかははっきりしていない。しかし、台湾政府は“有事の際にはケーブルが意図的に切断される事態が十分に想定される”として、バックアップとして衛星通信を強化するなど対策を急いでいる。日本国内では今のところ海底ケーブルの意図的な破壊が確認されたという事例はないが万一、起きれば深刻な影響が懸念される。大規模な災害を考えると、日本は海底ケーブルのルートが太平洋側に集中しているという問題がある。政府は日本海側などに分散化する計画をしている。一方、意図的な破壊に対しては海底ケーブルのほとんどは民間の所有物のため、対策はどうしても企業任せになっているというのが実情。特に問題が指摘されているのは、海底ケーブルが陸上に揚がる地点「陸揚げ局」の防護体制がぜい弱なこと。数多くの海底ケーブルが太平洋側の特定の場所に集中して陸揚げされているうえに、その場所は公開もされている。攻撃のターゲットになりかねないと安全保障の専門家は指摘している。
欧米の多くは安全保障の観点から海底ケーブルの防護を強化している。例えば米国は、海底ケーブルは国の安全に直結する重要インフラと位置づけて、海底ケーブルの計画に政府が関与することもある。陸揚げ局などはおおまかな位置が公開されているが、詳細な情報は原則、公開していない。また、英国は海中を監視する特殊な船を建造し、海底ケーブルを守る意思を内外に示している。安全保障と海底ケーブルの問題に詳しい慶應義塾大学の土屋大洋教授は「企業任せの日本の対策には限界がある。民間による防護のコストを国が負担する仕組みを検討すべきではないか」と話している。通信の命綱である海底ケーブルが途絶する影響の大きさを考えれば、その対策のため国の役割というのも重要。そして国を超えた協力もますます重要になってくる。