2024年4月7日放送 9:00 - 10:00 NHK総合

日曜討論
いま考える どうする日本の医療

出演者
牛田茉友 山下毅 
(オープニング)
オープニング

日曜討論はこの4月で30周年を迎える。新年度最初のテーマは「いま考える どうする日本の医療」。今月から始まった医師の働き方改革で、時間外労働の規制などによりこれまでの医療体制の確保が難しくなる病院も出てきている。医療費の増加や医師の偏在などについて武見厚生労働相と専門家が議論する。

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国民皆保険制度武見敬三
いま考える どうする日本の医療
働き方改革 医療現場は/医療費増 患者の負担は

医師の働き方改革により今月から休日・時間外労働は、一部の例外を除いて年960時間までに制限される。地域医療において茨城県では約8割が「救急当直を担う人材の確保が難しくなる」としていて、愛媛県でも全体の13%が「診療体制の縮小などは避けられない見込み」としている。医療費についても2022年度は過去最高の46兆円にのぼり、2年連続で過去最高を更新。政府は高齢者人口がピークに近づく2040年度には76.3~78.3兆円になるとみている。

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厚生労働省 ホームページ愛媛県茨城県医師会

武見さんは「働き方改革の主な目的は医師の健康と医療の質の管理」などと話した。吉村さんは「急性期医療は若手・中堅の自己犠牲的長時間労働によって支えられてきた。そこにメスを入れたのは良く踏み切ったと思う。一方で産科や新生児科などの24時間対応を求められる医療の対応能力の限定や、外科の手術数の削減といった影響もある。そこに対する準備は十分でない」などと言った。横倉さんは「地域医療をみると、国民の協力が無いと働き方改革は上手くいかない。救急では子どもは#8000に、大人は#7119にまず電話してほしい」などとした。袖井さんは「働き方改革の例外規定を設けたことが疑問。医師でなくてもできるような仕事は他の人にやらせるなど、業務そのものの改革が出来たら良い」などとした。伊藤さんは「日本は救急告示病院が多い。大きな病院から小さな救急病院に薄く広く派遣するのがメリットなのか検証が必要」などとした。武見さんは「医師がこれまでやって来たことを検査技師などにタスクシフトする仕組みに今変えている。これにより長時間労働は改善されてきている。3年前9%ほどいた1860時間以上働く医師が、今では4%ほどに減った」などとした。

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みやま市(福岡)千葉大学医学部附属病院厚生労働省日本医師会津田塾大学高齢社会をよくする女性の会

4月から公的医療保険料が一部で引き上げられた。75歳以上の高齢者に対し1人あたりの平均で年間4100円の増加が見込まれている。横倉さんは「いま若い世代に高齢者の医療費を相当負担してもらっている。収入や金融資産のある高齢者には少し医療費を負担してもらうべき。1961年施行の皆保険制度は世界でも珍しい制度だが、なんとか維持する必要がある」などと言った。伊藤さんは「年齢ごとに保険料が大きく異なる制度は、昔なら理解できるが、資産状況が把握できる現代において、この制度のまま続けるのは将来につけが回る。改革が必要」などと話した。武見さんは「年齢による負担よりも所得による負担という考え方でいま整備が始まった。これにより若い世代の負担を抑えていく考え方で整備が進んでいる」などとし、吉村さんは「生産年齢人口が減っている状態では、能力に応じた負担が望ましい」などとした。袖井さんは「社会保険料負担をあげるのはそろそろ限度だと思う。抜本的に解決するのは税だ」などと言うと、武見さんは「医療財源は税と保険料と患者負担で成り立っている。保険料を通じた応能負担で持続可能性を見極める必要がある。所得に関する負担は進めるが、資産に応じた負担はどこまで公平に把握できるかわからないためまだ難しい」などと言った。

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個人番号カード
これからの「病院」は

政府は医療機関の機能分化・連携に取り組み、医療を効率的に提供できる体制を確保するため地域ごとに2025年の医療需要と病床必要量を推計した。高齢化や人口減少によって集中的な治療が必要な急性期の病床を削減させる一方でリハビリなどを行う回復期の病床を拡充する。また今後在宅医療の強化などが検討されている。武見敬三氏は病院では病床整備ができて来ているが、問題は在宅を含めた診療所機能を今後どのように整備するかである等と述べた。袖井孝子は医療体制の整備は進んでおらず、診療所機能の整備を掲げている一方で診療所報酬が切り下げられていて政府の言っていることと矛盾する等と指摘した。伊藤由希子は自身の見方では病床の整備は進んではおらず、病院が持つ機能を十分に明らかにしなかった弊害がコロナ時に明らかとなったため検証を進めて機能を明瞭化して適切に分担するべきである等と指摘した。横倉義武は日本の入院体制は徐々に整備が進み地方ではかなり進んでいる一方で東京のような人口密集地帯の医療機能の整備をしていくべき等と話した。吉村健佑はこれまで地域医療は大学病院等の大きな病院からの派遣によって夜間救急などが維持されてきたが労働時間の上限規制で地域の救急を担う医師が引き上げてしまっている。また大学病院で働く医師の給料が安く年収300万円に満たない状況があり若手・中堅が立ち去って救急医療が維持できない問題がある等と述べた。

医者の偏在は/遠隔診療は

都道府県別に見た医師の充足度を示す偏在指標を紹介。赤色は医師が多いエリア、青色は医師が少ないエリア。東京・京都・福岡などで医師が多いのに対し、岩手・青森・新潟などで医師が少ない状況となっている。また、診療科によって医師数に偏りが生じている。1994年を1とした場合の推移を見ると麻酔科・形成外科・放射線科は増加しているが、外科や産科・産婦人科はほぼ横ばいとなっている。袖井氏は「緊急を有する産科・小児科・脳外科などにどう人を振り向けていくか。そういうところに行く人に対しては奨学金などの面で優遇するとか何かしないと全体のバランスが狂ってしまう」等と指摘。吉村氏は「シニアや中堅の医師も地域偏在対策ないし診療科偏在対策に参加できるようにする制度設計が重要だと思う。生身の医師を地域にあまねく専門医を含めて配置することは無理であるということを国民に説明し、例えばオンライン診療であるとか様々な技術を用いた代替的な診療行為を大胆に取り入れていかないと配置することは難しいと思う」等と指摘。武見氏は「地域において医師の数の割当を本気で考えなければいけない時代に入ってきたかなと思う。その中で診療科の偏在をどのように是正していくかも当時に考えることが必要。この点の考え方は今までと違う考え方で整備していく必要性が我が国に出てきていると感じる」等と述べた。オンライン診療などの遠隔診療に伊藤氏は「診療科や診療内容によっては適切に代替はできるものであるという前提で診療報酬などもインセンティブとして付けていかなければいけないと思う。医師だけで医療はできないので医師を支えている人達のサポートなどを適切に組めるようなことをしていかないと医師だけでどうにかなるというものでもないと思う」等と指摘。武見氏は「電子カルテを標準化させて全国的なプラットフォームを作り全ての医療機関が電子カルテのプラットフォームというものにアクセスし、オンライン診療する時にも患者の過去の病歴等に関わる大事な情報が常にそこを通じて患者にも医師にも共有でき、より適切な治療ができるようにさせておかなければならない。こういったことを総合的に戦略的に実施していくことによって我が国の地域医療がより効率的で持続可能なものになっていくと思う」等と述べた。

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京都府岩手県新潟県東京都福岡県青森県韓国
「フリーアクセス」は

日本は、どの医療機関でも自由に選んで受診できる。軽症状でも大規模病院での受診が可能となっていて、勤務医の労働環境悪化させる要因のひとつになっている。武見敬三は、かかりつけ医機能の充実強化がひとつの大事な優先課題となっているなどとコメントした。吉村健佑は、フリーアクセスを一部見直し制限することも合わせて地域別の政策が生きてくるなどと話した。イギリスではは、地域で指定された家庭医に見てもらい、必要と判断されれば大病院などに見てもらえる。伊藤由希子は、病気の早期発見を強化するということで成功しているシステムだと思っていると話した。袖井孝子は、患者自身も賢い医療消費者になり限りある医療資源を大切に使っていかないとなどとコメントした。吉村健佑は、メディカルスタッフを活用するなど可能性はまだあるなどと話した。横倉義武は、毎年1万人近いドクターがかかりつけ医の研修を受けているなどと話した。武見敬三は、確実にかかりつけ医になり得るプライマリヘルスケアフィジシャンを育て地域に配分し役割を果たせるようにしていかないといけない、イギリスと同じような登録員制度で硬直化させることは反対などとコメントした。

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厚生労働省日本医師会東京都
新薬・高度医療「皆保険」は/国民皆保険をどう守る

国民皆保険制度は、国民全員が公的医療保険に加入し保険料を支払うことで負担が軽減する。誰でも安い医療費で高度な医療を受けることができる。新薬や高度医療にともなう高額医療費を保健の対象とすべきか議論になっている。袖井孝子は、どこに線を引くか難しい問題だが、配慮をしないと皆保険制度は持たないと思っていると話した。武見敬三は、新しい仕組みを作らないと先端的な医療をカバーし続けて国民に最先端の医療を提供し続けるのは難しい状況になっているとコメントした。吉村健佑は、十分な効果が出ていないと確認された薬剤は積極的に外し、浮いた財源を新たな機器や医療行為に投資していくのが大切だなどと話した。横倉義武は、保険外併用療養制度の弾力的な運用がひとつの解決策になると思うとコメントした。伊藤由希子は、効果が残るものを残す仕組みを作るにはデータベースをきちんと取ることだと思うと話した。武見敬三は、具体策を積み重ねていくのが大事だとコメントした。

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がんアルツハイマーレカネマブ保険外併用療養費制度厚生労働省国民皆保険制度

吉村健佑は、ギリギリの状況を立て直していくには全世代の総力戦ないしは一蓮托生で前に進んでいく必要があるなどとコメントした。袖井孝子は、患者学みたいなのが必要ではないかと考えていると話した。横倉義武は、女性が婦人科に行けば健康寿命を解決することができるのでやっていただきたいなどとコメントした。伊藤由希子は、いま変えなければならないという気持ちを持つことが大事だと思うと話した。武見敬三は、マイナ保険証の普及を皆さん方にご協力をお願いしたいなどとコメントした。

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国民皆保険制度骨粗鬆症

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