クローズアップ現代 #4949 「この景色をいつまでも…」“持続可能な観光”実現のカギは?
今年7月、政府は全国35か所の国立公園でホテルを誘致するなど、宿泊施設を整備する方針を打ち出した。背景には訪日外国人旅行者をさらに増やすと共に、東京・名古屋・大阪などの三大都市圏に集中する旅行者を地方に分散させたいという狙いがある。この方針には自然破壊につながるのではないかという意見も出ているという。沖縄・恩納村には年間約300万人の観光客が訪れる。村内で最も人気のある観光スポットの一つが沖縄海岸国定公園内にある真栄田岬。海面が太陽光を反射して輝く「青の洞窟」は地元でも知る人ぞ知る観光スポットだったが、SNSなどで紹介されると多くの観光客が訪れるようになった。この海域でサンゴの生態調査を行っている琉球大学・中村崇准教授は記念撮影の際にサンゴを掴むなどすることで死滅したり、再生が遅れたりする可能性があると話した。村では3年前、内閣府と共に実証実験を行った。2021年11月から約1か月、真栄田岬周辺の海で利用時間と利用人数を制限し、自然環境や観光業への影響を調査した。ところがレジャー業者からは規制に十分な協力が得られなかった。しかし、利用を制限しないままでは結果的に観光客の満足度を下げていることも分かった。青の洞窟の入口では渋滞が発生し、美しい自然を楽しめない状況が生じていた。実証実験で行ったアンケートでは観光客の半数以上が一度に洞窟内に入る人数は5人未満にしてほしいと回答していた。さらに住民の生活にも支障が出ていた。夏のハイシーズンには180台収容する駐車場が観光客で溢れかえっていた。渋滞に巻き込まれて仕事に行けない人や道路に違法駐車する車もあったという。どうしたら自然を守りながら観光を続けられるのか、自治体とレジャー業者の対話は続いている。