”伝統芸能を守る”現場の模索

2024年11月11日放送 18:15 - 18:22 NHK総合
首都圏ネットワーク (ニュース)

建設費の高騰などで今、全国各地で商業施設や公共施設の建設が大幅な計画の見直しを余儀なくされている。1966年に開場した国立劇場は伝統芸能を保存継承する拠点として数々の舞台が上演されてきたが去年10月末、建て替えのために閉場し57年の歴史に幕を閉じた。大劇場には国内有数の16ものせりがあり俳優の登場やセットを動かす演出に存分に生かされてきた。せりなどを動かすのは舞台の下にある重さおよそ300トンに及ぶ大きな装置。半世紀以上使い続けて老朽化したびたび不具合を起こすようになっていた。当初は2029年度中の再開場を目指していたが入札の不調が続きこれまでの計画を見直すことになった。再開の時期はいまだ見通せない。伝統の灯を絶やしてはならないと国立劇場閉場中も都内のホールなどを借りて主催公演を行っている。ただ、施設を長期間借りることは難しく公演数は閉場前の半分以下に。公演場所が毎回変わることもあり常連客の足も遠のいているのが実情だ。花道のない劇場で歌舞伎の上演を余儀なくされることもある。少しでも本格的な舞台に近づけようと苦肉の策で特設の花道を設置した。国立劇場を運営する日本芸術文化振興会はそれぞれの劇場に応じた演出に積極的に取り組みたいとしている。再開場の見通しが立たない中、新たな発想で、逆境を乗り越えようとしているのが日本舞踊の花柳寿楽。古くから習い事として発展してきた日本舞踊は着物を着た日本人の所作や動きの美しさを今に伝えている。日本舞踊の人たちにとって国立劇場は最高のひのき舞台だった。長期の閉場を見据え寿楽が数年前から新たに始めたのが能楽堂での公演。国立劇場と違って客がいるのは舞台の正面だけではなく、横にいる客も意識して体の向きを変えたり踊る位置を後ろに下げたりするなど再構成している。再開場の日まで挑戦は続けるつもりだが、伝統芸能を伝える拠点は必要だと考えている。海外にも誇れる日本の伝統芸能を安心して継続できるように私たちもこの問題に関心を寄せていきたい。


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