「果てしなきスカーレット」をめぐる4年の日々〜細田守×岩崎太整 映画音楽の世界〜 (「果てしなきスカーレット」をめぐる4年の日々〜細田守×岩崎太整 映画音楽の世界〜)
2025年6月、都内のスタジオで弦楽器による収録が行われた。総勢210人に上る弦楽オーケストラは岩崎にとってもこれまでにない試み。
今作は中世の王女・スカーレットが父を殺され、宿敵に復讐を果たすため現代の看護師・聖と共に死者の国を旅するという壮大な物語が描かれる。かつて見たことのない世界観を表現するために音楽が重要なものとなる。細田守は「『竜とそばかすの姫』と同じ音楽家なのに全然違う印象。太整さんは音楽家である以上に映画制作者」と話した。今回、岩崎は作曲のみならずサウンドスーパーバイザーという役割も担い、映画の音全般に大きく関わった。
7月、スタジオで打楽器集団・LA SENASの収録が行われた。最初に行われたのは21台のスネアドラムの演奏。さらに、多国籍の様々な楽器を使った演奏が行われた。岩崎は「音楽の中にすべての大陸の音が全部入るということをやっている」と話した。世界中の音を取り入れる、岩崎は経験したことのない形で新たな音を作り出そうとしていた。さらに数日後、コンサートホールでパイプオルガンの収録が行われた。岩崎は世界観の表現に想像を超える低音が必要だと考えており、最も低い音を出せるパイプオルガンの音を入れた。
映画公開まで3カ月を控えた8月、岩崎はコントラバスを始めとする弦楽器制作を行う工房を訪れた。岩崎の依頼で職人の鈴木徹さんが制作したのは全長約180cmの巨大な楽器。パイプオルガンでは風の音が入るので、それとは違うものをという発想で依頼したという。岩崎が作品のために追い求める音、その飽くなき挑戦は続いていた。
