時論公論 (時論公論)
ふるさと納税は地方の活性化に貢献できる制度として設けられ、寄付を受ける自治体にとっては行政運営の新たな財源となる。寄付の受け入れ額は昨年度、1兆2000億円~3000万円と過去最高を更新したとされる。ふるさと納税はオンラインの仲介サイトを通じて行うのが主流で、寄付した自治体から返礼品が貰える上、手続きをしたサイトからもポイントが還元される。だが、10月からルールが見直しとなり、仲介サイトは事実上、ポイント付与ができなくなる。総務省はポイントが目当てで寄付する自治体を選ぶことは、地域を応援する趣旨と乖離していると主張。楽天グループは決定に異議を唱え、国を相手取って行政訴訟を裁判所に起こした。総務省によると、ポイントの原資がどこから出ているか着目し、寄付額のうち多くが寄付の募集の経費に充てられ、仲介サイト運営会社への業務委託費は23年度に1323億円にのぼったという。同省は自治体がサイトに支払う手数料を減らせば、集めた寄付を他の事業に使えると説明している。
ふるさと納税制度を巡って、大都市圏からの税の流出額が多い。世田谷区では学校の改築、子育て世帯の支援策など行政サービスの財源が圧迫され、区政に支障をきたしかねないという。東京23区の自治体からは現行制度は返礼品目的の官製通販という批判の声があがっている。平田英明教授は「ポイントが禁止になってもそれだけで解決するわけではなく、税の適正な使われ方という観点でも検証が必要」などと指摘。眼前の経済的メリットに国民の関心が向かうなか、ふるさと納税の本来の理念にどこまで近づけるかが問われている。