国際報道 辻’s ANGLE
”インテリジェンス”を扱う情報機関、その元トップであるデンマークの国家警察情報局PET元長官のヤコブ・シャーフさんがインタビューに応じた。まず尋ねたのは、ロシアがヨーロッパで仕掛けるハイブリッド攻撃について。「ハイブリッド攻撃」とは、兵器による通常攻撃にサイバー攻撃や破壊活動などを組み合わせ、地域に混乱を引き起こすこと。その一例は、先月、ドイツのライプツィヒ・ハレ空港で爆発物を搭載した無人機が見つかった事例。この空港は重要な物流拠点で、ウクライナへの武器や物資の輸送にも使われていた。ドイツのドブリント内相は今週、ロシアの関与があったとしたうえで「ドイツはますますロシアによるハイブリッド攻撃の標的になっている。さらなる被害も想定しておくべきだ。」と述べた。ヨーロッパでは最近、同じような事例が相次いでいる。例えば、バルト三国のリトアニアやエストニアでは、GPS妨害で民間機が空港に着陸できない事態が発生した。ノルウェーではダムへのサイバー攻撃が。そして、ルーマニアでは、無人機が領空侵犯、デンマークでは、空港周辺に無人機が侵入し、空港が一時、閉鎖されるなどの事態が起きた。ロシアはなぜハイブリッド攻撃を仕掛けるのか。シャーフ元長官は「ロシアはウクライナ戦争をヨーロッパへの攻撃の一環とみなしていて、各国の支援を阻止しようとしている。」などと述べた。
続いて尋ねたのはグリーンランドについて。アメリカのトランプ大統領はグリーンランドを自国のものとする野心を隠していない。デンマークの国防情報局は去年、脅威評価の年次報告書でアメリカを潜在的な脅威として記載した。シャーフ元長官は「諜報機関の活動では友人と敵を明確に区別することが難しい場合もある。」、以前と同じように米国を信頼できるかについて「今後も最重要のパートナーであり続けると認識しておくことは重要。」などと語った。アメリカがグリーンランドに野心を示すのは、中国との競争が背景にあると指摘するシャーフ氏。どういうことなのかについて、中国はデンマークとグリーンランドが面している北極圏を通る北極海港路に強い関心を示している。アメリカは中国がこの海域に原子力潜水艦を展開することを警戒している。それがアメリカのグリーンランド取得の要求に繋がっているという見解。シャーフ元長官はアメリカの懸念に真剣に向き合うことが、生産的な解決に繋がると指摘している。米国との交渉で前向きな成果は得られたのかについて、シャーフ元長官はトランプ政権とはやみくもにぶつかるよりは、自分たちが持っているカードを見極めたうえで、対話に持ち込むことが重要だと語った。危機の時こそ感情ではなく、事態を冷徹に見つめることで、国益を探っている姿勢が求められるそうしたメッセージであると感じられる。
