NHKニュース おはよう日本 (特集)
北海道余市町。ここには頻繁に世界各地の一流レストランのオーナーたちが視察にやって来る。北海道で品質の高いピノノワールがつくられる秘けつを知るため。このワイナリーの代表、曽我貴彦さん。海外のピノノワールにはないという独特の味わいが自慢。このうまみを出すために取り組んでいるのが土を毎年耕し直すこと。害虫を減らすため。また、さまざまな種類の草をバランスよく生やすことで土の中の微生物や菌で豊かな土壌を作る。余市ならではの気候も味方した。パウダースノー。雪が木を覆うことでかまくらのようになり、木が凍らずに新芽が守られるという。視察ではさまざまな工夫に対して称賛の声が集まった。世界から注目される余市エリアのワイン。ワイナリーの数はおよそ8倍、ワインを売りにしたレストランも3倍以上と地域活性化にもつながっている。
さらに余市には、海外からワインを造りたいと移住してきた人もいる。香港出身の凌嘉俊さん。凌さんは投資会社に勤めながらワインの輸入業もしていた。10年前に出会った余市のワインに感動した。地元のワイナリーの先輩から栽培から醸造まで一連の工程を学んでいる。今、力を入れて研究しているのが発酵中のワインの糖度などの分析。余市のぶどうの潜在力をより引き出すのがねらい。凌さんは将来この余市で家族と一緒にワイナリーを持つのが夢。
北海道がワインの産地として注目を集める背景には地球温暖化の影響がある。ピノノワールの原産地、フランスのブルゴーニュ地方。ここで300年続くワイナリーの代表、エティエンヌドモンティーユさん。ピノノワールの育ち方の変化に危機感を抱いてきた。ドモンティーユさんは大学にも協力を求め、世界各地の気温や降水量を徹底的に調査。新たな栽培場所がないか探し続けていた。そして選んだのは函館だった。ことしの夏にオープンしたワイナリー。南向きの斜面があり、風通しがよく、年間を通して涼しい函館。条件がすべてそろっていた。さらに適した環境にするため近くの業者からもらったホタテの貝殻などをまいてアルカリ性の土壌を作り上げてきた。地域ならではのミネラルが味わいにつながるから。ピノノワールの新たな産地として世界から注目される北海道。地域に可能性が広がっている。世界からの注目をチャンスにして北海道はさらにブランド力を高めようとしている。ワインを造る人のために醸造からマーケティングまで学べるアカデミーを自治体が無料で開いたり、大学が成分分析に協力したり、ワインに携わる人への協力態勢を整えている。