円安いつまで続く?暮らしへの影響は?

2024年5月27日放送 12:20 - 12:27 NHK総合
みみより!解説 (みみより!解説)

きょうのテーマは暮らしと円安。円相場はきょうも1ドル156円台と円安傾向が続き、私たちの暮らしにも影響が出ている。日本は石油などのエネルギーや食料品を海外から輸入しているが、このとき円で支払う額が円安だと割高になるから物価高へ繋がってくる。そうした中、先月シンクタンクのみずほリサーチ&テクノロジーズがまとめた数字が衝撃的だった。今年度の家計の負担が急激な円安やエネルギー価格の上昇を背景に、昨年度に比べて1世帯当たり平均で約10万6000円も増えるというもの。内訳としては、もともと今年度は電気、ガス料金の負担軽減措置を5月まででいったん終了することなどから、エネルギー関連で3万6000円の負担額が見込まれている。それに加えて、円安による輸入物価高騰の影響を受けて、食料品や飲料、それに外食などの負担が4万3000円程度増えるとしている。この試算では来年1月以降1ドル143円まで円安から円高に進むことが前提となっていて、想定以上に円安の度合いが大きければより負担が大きくなることも懸念される。
円安が続く背景には、日本の金利が低く米国は高いという日米の金利差がある。米国では、コロナ禍後の景気の回復で深刻なインフレが発生し、中央銀行にあたるFRBは景気の熱を冷やすために政策金利を急激に引き上げて、いま5%台。一方の日銀は、今年3月にマイナス金利を解除したが、持続的、安定的な物価上昇という目標を達成するために依然として0%程度と低い金利に抑えている。5%も金利の差がある中で、投資家としては金利の低い円を売って金利の高いドルを買う方がより多くの利益を得られるということで、円安の傾向が強い状況が続いている。金利差が円安の背景にあるから、逆に金利差が縮まっていけば円安から円高に向かうのではないかといわれている。ただ日銀は、日本経済が何十年も低金利に慣れている中で急激に金利を引き上げれば経済に混乱をもたらすとして、時間をかけて利上げを行っていく構え。一方、米国も物価が思ったように下がらず金利をすぐに下げるという状況でもない。当面、日本は金利を上げない、米国は下げないという現状がまだ続きそうだということで、円安傾向もまだ続きそう。
円安を通じて物価が上昇していることが家計にマイナスの影響を与えていることを示すデータがある。グラフ「現金給与総額の推移(前年同月比)」。厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、今年3月の1人当たりの現金給与総額は去年の同じ月から0.6%増えて27か月連続でプラス。ただ、その一方で物価も上がっている。そうした物価の上昇分を考慮した実質的な賃金、今年3月は前の年より2.5%のマイナス。先月まで24か月連続でマイナスとなっている。賃金が上がっていても物価がそれ以上に上がっているから、実質的にはマイナス家計はどんどん苦しい方に向かっているということ。今年の春闘では大企業の賃上げ率が5.58%と約30年ぶりの高さとなったが、その賃上げのプラスの効果を円安による物価高が台なしにしてしまうおそれもある。
そしてもう1つ気がかりなのは、金利の差以外にも円安をもたらす要因があるという指摘。通貨の価値はその国の経済の強さを反映するといわれるが、専門家は日本経済の停滞が今回の円安を招いた一因にもなったと指摘する。東京財団政策研究所・早川英男主席研究員(元日銀理事)は「日本経済の実力の低下、国力の低下みたいなのが見えていて、それがじわじわと効いてきているのも間違いない。力がついてこなければ円安になってしまうということ」と話す。かつて日本経済は製造業が強い国際競争力を誇って、輸出を拡大して巨額な貿易黒字を生みだしていた。稼いだ外貨を円に両替する時に、ドルを売って円を買うので円高になるという傾向が強かった。ところが韓国、中国、台湾といったライバル企業の台頭でかつて程の競争力はない。さらにデジタル分野ではAI=人工知能といったソフトやIT関連サービスを利用する際にこの分野の技術開発が進んでいる米国に巨額の使用料を払っている。その際、円をドルに替える、つまり円を売ってドルを買うことになるのでその部分が円安の要因になる。長期的な円安を食い止めるために、企業は研究開発や最新の製造設備、人材開発投資を行って国際競争力をいま一度強めていく。政府はデジタル化の後押しや規制緩和を通じて経済活性化の下地を作っていくといった取り組みが必要になる。今回の円安はそうした宿題をさぼってきたツケが回ってきたものと言えるかもしれない。


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