知られざる“被ばく” 高知 元船員たちの思い

2024年6月21日放送 7:26 - 7:34 NHK総合
NHKニュース おはよう日本 (特集)

今から70年前の3月1日、米国が太平洋のビキニ環礁で水爆実験を行った。静岡のマグロ漁船「第五福竜丸」などが被ばくした所謂“ビキニ事件”。約1000隻の日本の漁船(3分の1が高知の漁船)も被災したが、その実態はこれまで余り知られてこなかった。今回NHKは、約1年かけて元船員や遺族など関係者を訪ね歩き100人近くを取材。船員達は長らく事件について口を閉ざしてきた事が見えてきた。船員の“被ばく”認められず。第七大丸に乗船していた柳原亨(高知県室戸市出身)が取材に応じた。1955年1月、ビキニ事件から1年経たずに日米両政府は米国が実麻緒金200万ドル(当時の7億2000万円)を支払う文書を交わした。事件から3年後に進学のために上京した第七大丸元船員・柳原亨はこのころに体長に異変を感じたという。柳原は「専門学校に入ってから頭をかいたときに毛がバラバラと落ちた」と話す。元船員の仲間には40代でガンで亡くなる人も現れ始めた。しかし柳原は“偏見の目”が家族に向けられることを恐れ誰にも話せなかったという。
遺族の下本節子(73)は事件を風化させまいと活動している。今年3月、遺族として初めてマーシャル諸島で開かれた式典に参加した。事件後、全国有数の港町として発展した高知・室戸市で、漁師たちは漁業への影響を恐れて口を閉ざした。下本の父は事件のことを語らないまま78歳で亡くなった。下本はその2年後に父の被爆を知ったという。「父や船員たちの苦しみをなかったことにしてはならない」と国を相手取り元船員の救済を求める裁判を起こした。下本は「黙っていたらだめ。いわないとなかったことにされてしまう。“これ以上被ばく者を出させない”というところに自分の気持ちを充てたい」と話す。


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