経済成長率“目標達成に自信” 中国経済失速で広がる不満

2025年3月6日放送 21:23 - 21:31 NHK総合
ニュースウオッチ9 (ニュース)

ことしの経済成長率について、5%前後と高い目標を打ち出した中国。きょうの記者会見でも、達成に自信を見せた。しかしその発言とは裏腹に、経済は不動産不況などを背景に失速し、不安や不満も広がっている。中国・李強首相は「奮闘していこう」と述べた。きのう始まった中国の全人代(全国人民代表大会)。経済政策を統括する高官が会見し、アメリカとの貿易摩擦の激化が懸念される中でも、経済目標の達成は可能だと主張。国家発展改革委員会・鄭柵潔主任は「5%の目標は、政府が科学的な根拠に基づいて慎重に出したものだ。十分に自信を持っている」と述べた。
しかし足元では、雇用情勢が厳しさを増している。中国南部・広東省広州の出稼ぎ労働者に縫製工場などでの仕事を紹介する施設。毎日1万人以上が集まるが、求人の減少や賃金の下落で、条件が合う仕事を得られない人であふれていた。経済が減速する中で、中国では社会不安への懸念が広がっている。去年11月、広東省で暴走した車が市民を次々とはねた事件。35人が犠牲となった。事件発生から3か月以上がたった今も現場は封鎖され、中に入ることはできない。運転していた62歳の男には、1月、死刑が執行された。市民を無差別にねらった事件は、中国で相次いでいる。去年11月には、中国・江蘇省の学校で、21歳の男に刃物で襲われて8人が死亡。中国・湖南省でも39歳の男が運転する車にはねられて、小学生を含む30人がけがをした。こうした事件の背景には、社会への不満などがあるという指摘も出ている。
経済的な苦境は、社会の閉塞感にもつながっている。中国・北京で午前5時半過ぎ、仕事を求める大勢の人が集まっている。仕事が見つかると、労働者はここから仕事先に向かう。しかし、求人が減少し、この日は午前8時になっても仕事が見つからない労働者が多く残っていた。出稼ぎ労働者の1人に、話を聞いた。人材派遣会社や求人の貼り紙がある店などを訪ねて回ったが、仕事は見つからなかった。家族に仕送りをするため、インターネットカフェに寝泊まりすることもあるという。男性は「大学に通う子どもがいる。今の給料では授業料を払えない。全く希望が持てない」と語った。政府に対する不満の声も上がっている。労働問題などの仲裁を行う政府機関には連日、多くの人が訪れている。給料未払いの仲裁の申請に訪れた40代の女性が、匿名を条件に取材に応じた。女性は、北京にあるIT事業などを行う会社で人事を担当。去年9月から給料が未払いとなり経営者と連絡が取れない状況。女性は、意を決して訴えを起こしたものの、政府側からは、仲裁の開始は5か月先だと告げられた。女性は「弱い立場の市民が取り残されている」と怒りを募らせている。
相次ぐ殺傷事件を受け、中国・習近平指導部は統制を強めている。香港メディアによると、中国・広東省の当局は、投資に失敗した人や失業した人などを「8失人員」と呼び、警戒するよう指示まで出しているという。中国は景気の減速や社会不安への懸念、さらにはアメリカとの貿易摩擦でまさに内憂外患の状態といえそう。


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