- 出演者
- 岩渕梢
有害性が指摘される化学物質PFASについて、高濃度のPFASが水道水に入っていた自治体で住民の血液検査が行われるなど、最近も各地で問題になっている。健康への影響や対策について土屋敏之解説委員に聞く。先週は大阪府熊取町の井戸水から国の暫定指針値の1460倍ものPFASが検出されたとニュースになったし、最近も各地で見つかっている。PFASとは人工的に作られた有機フッ素化合物の幅広いグループの総称で、全部で1万種類以上あるとされている。熱に強く水や油をはじきやすいなどの性質があることから、食品の包み紙や衣類のはっ水加工、油火災などで火を消す泡消火剤や半導体の製造工程など、本当に幅広い用途で世界中で使われてきた。ところが、近年になってこのPFASの一部には発がん性やコレステロール値の上昇、子どもの発育への悪影響などさまざまな有害性が指摘されるようになってきた。岡山県吉備中央町では、2023年までの数年間にわたり水道水に国の暫定目標値の最大で28倍のPFASが入っていたことが明らかになっている。これは水源の上流にあった資材置き場にPFASを含んだ使用済み活性炭が置かれていたことが原因だったのではないかと指摘されている。現在は対策は取られているが、健康影響への不安を持つ住民に対して、町は去年11月から全国で初とされる公費での血液検査を行って、今週16日にその結果についての住民説明会が開かれた。問題となった水道水が供給されていた地域の人たちは、他の地域の人に比べて血液中でPFASの一種であるPFOAと呼ばれる物質の濃度が特に高いことが分かってきた。その値は平均で1mL当たり171.9ng。実は血液中のPFASについてはまだ公式な基準値というのはないが、アメリカの学術機関は20ngを超えると健康リスクが増すとしていて、平均でも大きく上回る濃度だった。実際、説明会に参加した住民からも強い不安の声などが上がっていた。健康への影響についてはまだよく分かっていない面も多いが、体内に取り込まれたPFASが十分低い濃度になっていくには長い年月がかかるとされることから、町は無料の健診や、5年後にはもう一度血液検査を行うことなどを予定している。つまり、今後も長期的に健康状態を見守っていく必要がある。
PFASに関する規制。1万種類以上あるとされるPFASのうち泡消火剤などに使われてきたPFOSと呼ばれるものや、先ほどのPFOA、そしてこれらの代替品として使われたPFHxSと呼ばれるものについてはすでに国際的に規制されて、日本でも法律で製造や輸入などは原則禁止。ではなぜ最近になっても見つかっているのかというと、PFASには永遠の化学物質とも呼ばれる程自然には分解されにくい性質がある。そのため過去に基地や工場などで使用され環境中に排出されたものが、その後も長く土壌や地下水に留まって今も残って検出されるということが考えられる。そして、もう1つの問題は水道水などについては国は2020年に暫定目標値としてPFOSとPFOAを合わせて水1L当たり50ng以下という値を決めてはいるが、これはあくまでも暫定的な目標なので、水道事業者には測定する義務もない。そのため、これは決して吉備中央町だけの問題ではない。去年の秋、国が全国の自治体や水道事業者などの調査報告を取りまとめたところ、昨年度までの4年間に14の水道事業者などで暫定目標値を超える濃度が検出されていたと分かった。高濃度が見つかったところはすでに対応されていていまは安全だとされるが、問題は規模が小さいところを中心に約4割の水道事業者などはこれまでに調査や回答を行っていないこと。調べていなければ今も高濃度のPFASが入っているおそれも否定はできない。そこでようやく国はこれを測定義務などがある正式な水質基準にする方針を決め、今月環境省の検討会で来年4月からPFOSとPFOA合わせて50ng/Lを義務化することや、他に8種類のPFASについて要検討項目という扱いにして情報を集めていくことなどを案としてまとめた。まずは住んでいる地域の水道局などのホームページをチェックしてPFASの測定をしているのかどうかを確認してみるとよい。測定の結果そこでPFASが検出されない、あるいは非常に低い濃度だということが分かれば安心できる。自分の自治体が測定していなかったり、万一濃度が高かったという場合は、例えば浄水器については活性炭などのきちんとしたフィルターを付けたものであれば一定の効果があるとされている。ただ、定期的なフィルター交換は必要。そしてミネラルウォーターについても、一般的には安全性だと感じるが、実は以前の調査で一部のものから高濃度のPFASが検出されたことがあって、現在は明確な基準がない。そこでこれについても消費者庁が先週有識者の会議を開き、ミネラルウォーターについても来年の4月から水道水と同様の基準を設けてメーカー側に品質管理を義務づけるという方針を示されている。やはり安全な水を安心して飲めるというのは私たちの生活の基本なので、国はきちんと方針を決めて対策を早く進めて欲しい。
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