- 出演者
- 桑子真帆
オープニング映像。
3年前、行財政改革など、県政の刷新を訴えて当選した斎藤前知事。人口減少が進む中、改革を強力に進めていくことが期待されていた。斎藤前知事は就任1年で58事業の廃止や見直しのほか、当時700億円かかるとされた庁舎などの再整備計画の凍結。県立大学の段階的な完全無償化を行った。改革の司令塔としてつくったのが10人程度で構成される新県政推進室。以前は知事と各部局が個別に議論を重ねていた政策形成のプロセスを簡素化し、迅速な意思決定が行えるようにした。その後は新県政推進室も形式化し、側近と呼ばれる少数メンバーで物事を決めていくようになったという。複数の職員はこれが組織の健全さを欠く事態を招くことになったと話した。部長級だったOB職員は次第に“もの言えぬ空気”が生まれていったと述べた。さらに人事権をちらつかされて、圧力を感じたという職員もいた。前知事が打ち出した政策に意見を述べたOB職員は後日、県の幹部から「斎藤県政に刃向かうんだったら辞表を書け」と言われたという。こうした空気の中、職員たちは前知事の言動に声を上げることができなくなっていった。今回の問題が起きた後に行われたアンケートでは130人の職員が前知事のパワハラの疑いがある言動を「目撃などにより実際に知っている」と回答。取材に応じた複数の職員たちが口にしたのは見て見ぬふりをした後悔だった。ある職員は任意で選ばれた知事の意向に意見することは容易ではないと述べた。一連の混乱を受けて失職した斎藤前知事。結果責任を認める一方で、改革は成果を挙げたと訴えた。
斎藤前知事は出直し選挙に立候補する意向を表明している。兵庫県知事選挙には医師・大澤芳清氏、参議院議員・清水貴之氏、元経産官僚・中村稔氏が立候補を表明しており、前尼崎市長・稲村和美氏は立候補する方針を固めている。江藤俊昭は“もの言えぬ空気”だけでなく、個人の尊厳や人権を侵害していた。リーダーシップの在り方を誤解する自治体が現れるとこういう事態が生じると話した。地方自治体では政策・予算・人事などの権限は知事に集中している。自治体の職員たちは補助機関という位置づけになっており、知事の意思決定をサポートすることが役割になっている。江藤俊昭は独任制を独善性と誤解していた部分があると話した。政治倫理条例やハラスメント防止条例で歯止めをかけることが大事だという。リーダーには判断能力や結果責任だけでなく、コミュニケーション能力が求められると話した。
元局長が当時の斎藤知事や片山副知事ら側近を告発した文書を報道機関などに送ったのは今年3月。その後、斎藤前知事がその存在を把握。側近に告発者を捜すように指示し、内部調査が行われることが決まる。側近たちは疑わしい職員たちをリストアップ、パソコンに残されていたメールの履歴を調査した。3日後、文書を作成したのが元局長であることが判明。かつて人事課にいた職員は誰が書いたんだ、誰が情報を与えたんだという調査方法は異様だったと話した。告発者を特定するために片山前副知事が元局長に聞き取りを行った。元局長は情報を誰から聞いたのか尋ねられると、噂と答えた。情報を出した人間も処分をしようとしていた可能性があり、名前を出せなかったという。その後、告発文書は信頼性の欠けた真実性の乏しいものであるとみなされていく。調査が行われた2日後、斎藤前知事は記者会見で事実無根の内容が多々含まれている、うそ八百含めて文書を作って流す行為は公務員として失格と述べた。県は元局長を停職3か月の懲戒処分にした。その後、百条委員会で専門家は知事らの振る舞いは公益通報者保護法に違反すると指摘している。公益通報者保護法では通報者捜しをしないように求め、通報者に不利益な扱いをすることを禁じている。元局長は処分を受けた2か月後、“死をもって抗議する”というメッセージを残し、自ら命を絶った。斎藤前知事はNHKの番組に出演し、当時の対応に問題はなかったという認識を示している。