2024年9月18日放送 19:30 - 19:57 NHK総合

クローズアップ現代
「助けてと言ったのに・・・」 生活保護でいま何が?

出演者
桑子真帆 
(オープニング)
申請数 過去最多 生活保護でいま何が?

月1回の生活保護の支給日、台風の中でも窓口には長打の列ができていた。いま、生活保護受給は165万世帯を超えている。物価高騰などを背景に申請数が増えている。一部の自治体では不適切な対応が明るみになっている。

キーワード
堺(大阪)
オープニング

オープニング映像。

「助けてと言ったのに…」 生活保護でいま何が?
生活保護でいま何が?相次ぐ“不適切対応”

生活保護をめぐってはこれまで度々不祥事が起こっている。神奈川県小田原市で市の職員が「保護なめんな」と書かれたジャンパーで業務にあたっていた。去年3月以降、運用が不適切だとして第三者委員会を設置した自治体は少なくとも5つ。

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小田原市(神奈川)

群馬県桐生市。去年11月、生活保護費の未払金が発覚した。去年7月に生活保護を申請し受給することになった60代の男性は建設関係の仕事をしていたが持病が悪化し、仕事が続けられなくなり生活保護を申請した。生活費としての支給額は月7万円だが、役所のケースワーカーから職探しのために毎日ハローワークに通うよう指導を受けた。受け取ったのは約3万円だった。生活に行き詰まった男性は司法書士に相談。支援活動を続ける仲道宗弘さんが実態を調査し告発した。訴えをきっかけに調査を行った桐生市、11世帯に生活保護費未払いを認め謝罪した。桐生市の担当者は組織としての取り組み方に問題があった、自立支援に重きを置きすぎたと話した。その背景にあるのは国が自治体に出した通知。働くことが可能な受給者に対して集中的な就労支援を行い、生活保護の早期脱却を目指すと記されている。桐生市では他にも不適切対応の疑いがあったことが明らかになっている。特別監査で指摘されたのは、申請権の侵害。通常、自治体の窓口で行われる生活保護の申請、審査をするのが行政の役割だが、桐生市では申請させないケースが複数確認された。9年前に父親の申請を拒否されたという女性。心臓病を患い仕事を失った父親は家賃滞納で家を無くし、廃屋になっていた実家で暮らすようになっていた。毎週、食料を届けるなど貯金をくずしながら父親を支援していたが、家計は苦しく支えきれなくなった。そこで福祉課に繰り返し相談したが、家族で支えあうようにと言われたという。桐生市の人口に対する生活保護受給者の割合は国や県が横ばいだが、桐生市は年々減少していて、過去10年で半減している。

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仲道宗弘桐生市桐生市役所桐生市(群馬)

生活保護で不適切対応が相次いでいる。桜井啓太さんは自立支援の名の下に受給者を追い詰める対応が出てきたのはステージが変わった印象。桐生市のケースの背景には国が就労自立支援の強化などの方針転換を行ったことにあると指摘。自治体は生活保護の運用にあたって、国から様々なことを求められている。漏れなく救うこと、最低限度の生活を補修することと同時に求められているのが、不正受給を防ぐこと。さらに、国によって自立支援を強化するように求められている。不正受給は全体の0.3%、捕捉率は20~30%とされている。うち高齢者世帯は55%。桐生市の幹部は現場の繁忙感もあったとしている。

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桐生市
生活保護でいま何が?迫る“運用の限界”

約2万世帯が生活保護を受給している大阪府堺市。申請件数は増加し続けている。ケースワーカーの西智弘さんが担当するのは115世帯、国が定める基準の80世帯を大きく超えている。西さんが特に難しさを感じるのが自立支援。生活保護を受ける40代の男性に自立支援をしようとしているが、男性の持病の治療が思うように進んでいない。すぐに働くことはできないと判断し、これから頻繁に家に通い治療を促すことにした。この日、就労支援の面談が行われていた。コロナ禍で会社を解雇になった40代男性が訪れた。面談をするのは委託先の就労支援スタッフ。国はケースワーカーの負担を減らすため、業務の外部委託化を可能にした。堺市でも一部を委託してきた。それでも西さんはできるだけ面談に同席するようにしている。ケースワーカーは受給者の状況を把握することが求められているから。男性の結果は不採用だった。就労支援を受ける受給者の半数以上が40~50代、仕事が決まるまでに数年かかる人もいるという。ケースワーカーには就労支援以外にも、保護費の算定など様々な仕事がある。受給者が最低限の生活ができているか把握することも大事。60代と30代の親子は息子に軽度の知的障害があり、お金の管理がうまくできない。西さんは命に関わるおそれがあると考え毎月訪問している。国に運用実態を報告するための外部監査が行われた。優先順位をつけなければ業務がまわらないという議論がされた。堺市ではケースワーカーを増員したが、申請者が増加して対応が追いつかなくなるなることを危惧している。

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堺市堺(大阪)
最後のセーフティーネット 守るために

厚生労働省は自治体が運用の限界を感じていることについて、ケースワーカーの人員体制の確保・負担軽減を図ることが重要、支援調整・情報共有の会議体設置規定を新設などとしている。桜井啓太さんは各自治体の生活保護受給者の割合が10年でどのくらい変化したのかを調査。これによって自治体の負担がどれだけ増えているのかが分かり、バロメーターになるという。

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厚生労働省
“いまが変わるチャンス”支援続けた司法書士の思い

生活保護費の未払い問題を告発した司法書士の仲道宗弘さん、ことし3月にくも膜下出血で亡くなった。妻のさゆりさんは、「国家資格を持つ者は国民のために働くんだ」と言っていたという。亡くなる1週間前に仲道さんは、違法な対応がなぜ起こったのか認識・把握した上で常にチェックする必要がある、いつ生まれ変わっても本当に制度を改革するきっかけになるかもしれない、チャンスかもしれないと話していた。

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仲道宗弘

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