2024年9月10日放送 19:30 - 19:57 NHK総合

クローズアップ現代
熱中症以外にも!?新たなリスク「気候変動関連死」

出演者
桑子真帆 
(オープニング)
熱中症だけでじゃない?暑さが招く命のリスク

観測史上最も暑くなったこの夏、気候変動が命を脅かしている。暑さは様々な病気を悪化させ命を危険にさらしていることがみえてきた。研究者はこのまま温暖化がすすめば猛暑日は1.8倍に増えると試算。暑さによる死者の数はさらに増加していくと危惧されている。気候変動関連死は毎年25万人にのぼると予測されている。

キーワード
アフガニスタンサウジアラビアテドロス・アダノム・ゲブレイェススブラジル世界保健機関熱中症
オープニング

オープニング映像。

熱中症以外にも!?新たなリスク“気候変動関連死”
熱中症だけでじゃない?暑さが招く命のリスク

年間6000の遺体の死因を究明している大阪府監察医事務所。死因がわからなかった遺体が運ばれてくる。監察医の吉田謙一さんは暑さが原因で亡くなった人たちを詳しく分析すると、高温環境下で熱中症とは別の要因で亡くなっている人が少なくないことがわかった。80代の女性はエアコンオフの部屋で亡くなっていて死因は心不全が疑われた。血液検査を行うと心不全を悪化させる低アルブミン血症が重症化していた。低アルブミン血症は栄養不足によって引き起こされる。暑さが食欲不振をまねき、持病を悪化させ死につながったとみられる。吉田さんは高温環境下で脂肪肝や糖尿病などの持病を悪化させて亡くなるケースも多くみられるという。熱中症以外に暑さがまねく死は多数にのぼる可能性も指摘されている。日本国内の気温と死亡者数の関係を解析した論文では、統計3万人以上が暑さが影響して亡くなっていた可能性があることが明らかになった。熱中症で亡くなった人の7倍にのぼる。

キーワード
大阪府監察医事務所熱中症

猛暑と気候変動の関係を調べている今田由紀子さん。用いたのはイベントアトリビューションという解析手法。条件の違う2つの地球をスーパーコンピューターの中につくり比較する。1つは温暖化が進んだ現在の地球、もう1つは温暖化が起きていない架空の地球。気象条件を変えて100通りのシミュレーションを行った。現実の地球は高温を示す赤が多いが、温暖化の起きていない地球はどんな気象条件でも今年のような猛暑にはならなかった。これまで不明確だった温暖化と猛暑の因果関係が科学的に明らかになってきている。さらに温暖化がすすめば健康に大きなリスクとなる猛暑日は現在の1.8倍になるという将来予測もある。暑さの影響で亡くなる人が将来どれくらい増えるのか予測した研究によると、東日本のほとんどは3倍に増加、関西や四国などは4~5倍、鹿児島では10倍に増加するとみられている。

キーワード
東京大学

暑さで体調を崩す人たちが搬送されてくる救急の現場。温暖化でこれ以上患者が増えるといまの体制では対応できなくなるとの懸念が広がっている。気候変動が深刻化する地球、命を脅かすケースが世界各地で起きている。今年6月、サウジアラビアでは聖地巡礼中に暑さで1300人以上が死亡した。今、世界で危機感が高まっているのがメンタルヘルスへの影響。40度以上の日が続くアメリカ・アリゾナ州。メンタルクリニックでは暑い日が続くと、心の不調を訴える患者が相次いで訪れる。寝不足やホルモンバランスの乱れるが起きることで心の不調が悪化してしまう。アメリカ国内で暑さとメンタルヘルスの関係を調査した論文によると、気温と自殺率の統計を調べると、平均気温が2度あがった場合自殺者が563人増加するという結果になった。

キーワード
アフガニスタンアリゾナ州(アメリカ)サウジアラビアブラジル東京曳舟病院

暑さによる命のリスクは様々ある、循環器疾患、呼吸器疾患、糖尿病など。暑さを避けるために適切なエアコン使用、水分補給、栄養補給、十分な睡眠が必要。日本の気温と自殺者数のデータを解析すると、気温が上昇すると自殺者数が増えるということがわかった。気温によって誘発される自殺者数は、全自殺者数の約4.2%を占めている。将来気温が上がっていくと、自殺のリスクが増加する可能性がある。気候変動による命のリスクとしては下痢、栄養失調、マラリア・デング熱などがある。これらの気候変動関連死は2030~50年に年間25万人になると推計されている。

キーワード
世界保健機関熱中症
気候リスクは命のリスク 世界で進む地域の“改革”

記録的な猛暑に襲われたアメリカ。路上生活をおくる男性は熱中症で倒れ、動けなくなった。高温のアスファルトでやけどをし、足を切断せざるをえなくなった。フロリダ州のある自治体で新しい試みが進めされている。熱波対策の責任者チート・ヒート・オフィサー(CHO)を設置した。ジェーン・ギルバートさんは環境問題に取り組むNPOを率いた経験から任命された。CHOは気候変動対策の戦略を策定した上で、民間を巻き込み具体的な対策を講じていくことが期待されている。ギルバートさんはまず、福祉部門と連携し地域ごとの暑さのリスクを可視化した。熱中症患者の住所から地域ごとの発生率を分析し、発生率が高い場所と低所得者層が多い地域が重なることがわかった。リスクが高い地域に早く効果的な対策をうつのもCHOの役目。ボランティアで低所得者に診療を行っている医師のNPOに暑さ対策の協力を求めた。患者の多くは移民で熱中症についての行政からの情報が十分に届いていなかった。CHOは行政の予算で身体を冷やすためのタオルや説明のためのパンフレットを提供。NPOはこれらを使って暑さ対策の周知を行っている。ギルバートさんが力を入れているのが、温暖化に強いまちづくり。二酸化炭素の削減と都市部の気温を下げるために緑地を地域の30%にまで広げる計画を立てている。さらに、緑地化するときの植物の種類にもこだわっている。特定のハーブやシダ類には空間を冷却する効果があるのだという。CHOは植林などを行うNPOに依頼し、冷却効果のある植林を使用する方針を決めた。この動きを支援しているアメリカの財団は都市から世界の気候変動対策を変えていきたいと考えている。

キーワード
フロリダ州(アメリカ)熱中症
気候リスクは命のリスク 私たちができること

日本でも気候変動に地域全体で取り組む動きが広がってきている。気候市民会議という取り組みは、無作為に選ばれた住民が半年にわたり気候変動への対策を議論する。そのアイデアを行政に提言し、政策に活かそうという取り組み。これまでに日本では18の地域が実施してきた。つくば市では高齢者などにバス・タクシーの無料券を配布、AIによる電気の自動制御という提言が出た。江守正多さんは緩和策と適応策が必要だという。できることは、正しい情報を集めること、声をあげると世界が変わる、生活を見直す、地域の気候変動対策に参加することなど。

キーワード
つくば市(茨城)

© 2009-2024 WireAction, Inc. All Rights Reserved.