- 出演者
- 桑子真帆
9月も厳しい残暑が予想されるなか、住まいも見直しの必要がある。この夏、熱中症の疑いで死亡した23区のうち9割以上が屋内で死亡した。住まいの対策が急務だと、自治体は高齢者の家の訪問をはじめた。エアコンをつけていても暑い家があった。快適で地球にも優しい住まいを探る。
オープニング映像。
住宅が暑くなりやすいのはなぜなのか?築50年の団地の最上階に住む後藤さんは夏の部屋の暑さが耐え難いという。気温34℃の日、家の中はエアコンを入れているが30℃。エアコンの設定は27℃にはなかなか下がらない。夜になっても家の中の温度は高いまま。後藤さんの部屋を住宅環境を研究している川久保さんに検証してもらった。サーモグラフィーで室内を見ると、特に温度が高い場所があった。川久保さんが注目したのは窓、厚さ3ミリのガラス、窓枠にはアルミが使われていた。さらに、天井。天井の温度は40℃にもなっていた。ベランダの軒は約52℃あった。天井の熱は太陽が照りつけた屋根から伝わっていた。日本の住宅の多くは外の熱を窓や屋根から取り込みやすい構造になっている。欧米を中心に世界では建物の熱の出入りを断つ断熱が進んでいるが、日本の住宅の7割が無断熱・低断熱。断熱が不十分な部屋ではエアコンにも無駄が出ていた。天井と窓付近の空気が温かいため、冷気は部屋の下に追いやられ、温度にむらができていた。エアコンは部屋の上部の温度を感知するため、強く作動するが、効率が悪く電気代も上がってしまう。この温度むらは後藤さんの健康にも影響している。夜、床のあたりは冷えすぎるためタイマーを設定して就寝。このときの室温は26.5℃。エアコンが切れると深夜に目を覚ましてしまう。部屋の温度は30℃を超えていた。昼間にコンクリートの屋根に蓄えられた熱が夜になっても冷めず、断熱が不十分な部屋の中に伝わっていると考えられる。
今すぐできる家の暑さ対策を紹介。窓の外で日ざしを遮る。シェードやすだれを窓の外に設置して、窓から部屋に日差しを入れないことが大事。空気の層で断熱する。窓に内窓を取り付けることで熱を伝えにくくするという。日本の住宅の7割が断熱されていない。日本の伝統的な家作りは湿気対策に重点を置いてきたため、木材が腐らないように風通しの良さを重視してきた。近年の温暖化にともない、家の断熱構造を考えていく必要がある。
東京・多摩市にある築41年のマンション。去年大規模修繕にあわせて断熱改修をした。改修では窓をガラスが2枚っ入った複層ガラスに交換しガラスの間の空気が熱を入りにくくしている。屋根や壁は外側から断熱した。建物の外側を丸ごと断熱材で覆うとコンクリートが太陽にさらされず、天井や窓から熱が入るのを防ぐことができる。
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- 多摩市(東京)
冬のために断熱することで結果、夏も空調が聞きやすくなる。日本の夏は室内と室外に温度差を作ることになる、そのために断熱構造が必要になってくる。断熱したときに気をつけるのは結露。シックハウスなどにつながるので、気密性能を確保することが大事だという。
今年3月に自宅を断熱リフォームした山内和子さん。築56年の木造12階建ての家を改修した。家中の窓に内窓を設置、天井裏には断熱材、床下にはウレタン樹脂を吹き付けた。費用は330万円、補助が100万円ほどだが自己負担は約230万円だった。見積もりを聞いたとき和子さんはリフォームに消極的になったという。それでも費用を出すからと改修をすすめたのは息子の和徳さんだった。母親の体を心配していたから。山内さんの生活は変わった。以前はエアコンのある居間を締め切っていたが、今は1台のエアコンで1階が冷えるので部屋を広々と使えるようになった。2階の寝室は以前は暑くて寝ることができなかったが今は寝れるようになったという。
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- 上尾(埼玉)
集合住宅全体を断熱する場合、費用の他にも課題がある。住民の賛成を得なければならない。去年、断熱改修した239戸のマンション。費用のほとんどは補助金で賄える見込みだったが、当初住民からは断熱改修は必要ないとの声もあった。管理組合は断熱のメリットを数値化した。光熱費が月2000円ほど下がることや、建物寿命が60年のび ることなどを提示した。説明会を重ねて9割以上が賛成し、全戸の改修リフォームをすることができた。夏の電気代は月平均で1800円ほど下がった。断熱の効果を実感し、住民のコミュニティもいっそうまとまったという。
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- 多摩(東京)
家の断熱をすることを温熱のバリアフリー化と呼ばれていて、これにより温度ムラがなくなり、室温が安定すると免疫力が上がることにつながるなど健康メリットがある。国は断熱リフォームに補助制度を設けている。高断熱の窓・ドアの設置には補助率2分の1相当、天井・床などの断熱改修は上限60万円など。国は来年4月から全ての建築の断熱を義務化すると決めた。国は温暖化対策として住宅の省エネを推進しているのだという。ドイツにはパッシブハウスというのがあり、太陽の力をうまく使い、断熱気密構造で設備に依存しない家づくりができるという考え方。環境問題は人権問題でもあり、誰も置き去りにならない社会と考えると、新築だけでなく中古物件のリノベーションや賃貸を良くしていくことなどをやっていかなければならない。