住宅が暑くなりやすいのはなぜなのか?築50年の団地の最上階に住む後藤さんは夏の部屋の暑さが耐え難いという。気温34℃の日、家の中はエアコンを入れているが30℃。エアコンの設定は27℃にはなかなか下がらない。夜になっても家の中の温度は高いまま。後藤さんの部屋を住宅環境を研究している川久保さんに検証してもらった。サーモグラフィーで室内を見ると、特に温度が高い場所があった。川久保さんが注目したのは窓、厚さ3ミリのガラス、窓枠にはアルミが使われていた。さらに、天井。天井の温度は40℃にもなっていた。ベランダの軒は約52℃あった。天井の熱は太陽が照りつけた屋根から伝わっていた。日本の住宅の多くは外の熱を窓や屋根から取り込みやすい構造になっている。欧米を中心に世界では建物の熱の出入りを断つ断熱が進んでいるが、日本の住宅の7割が無断熱・低断熱。断熱が不十分な部屋ではエアコンにも無駄が出ていた。天井と窓付近の空気が温かいため、冷気は部屋の下に追いやられ、温度にむらができていた。エアコンは部屋の上部の温度を感知するため、強く作動するが、効率が悪く電気代も上がってしまう。この温度むらは後藤さんの健康にも影響している。夜、床のあたりは冷えすぎるためタイマーを設定して就寝。このときの室温は26.5℃。エアコンが切れると深夜に目を覚ましてしまう。部屋の温度は30℃を超えていた。昼間にコンクリートの屋根に蓄えられた熱が夜になっても冷めず、断熱が不十分な部屋の中に伝わっていると考えられる。