2024年9月4日放送 19:30 - 19:57 NHK総合

クローズアップ現代
健康寿命を延ばせるか “老いにあらがう”研究最前線

出演者
桑子真帆 
(オープニング)
健康寿命を延ばせるか 老いにあらがう最新研究

100歳を超えて現役で働く理容師の女性、124歳の誕生日を迎えた男性、どうすれば健康に長生きできるのか?今、老いを食い止めるとする技術開発に巨額のマネーが流入している。老化をめぐる最新研究からみえてきた実用化への道筋とは。

オープニング

オープニング映像。

健康寿命を延ばせるか “老いにあらがう”研究最前線
健康寿命を延ばせるか 老いにあらがう最新研究

日本は世界で最も長寿の国、平均寿命は男女ともに80歳をこえている。しかし、健康寿命との間には約10年の差がある。この間に生活の質は下がり、社会保証費は膨らむ一方。この差を縮められないか、近年、長寿で知られる動物たちの研究から新たな可能性がみえてきた。

健康寿命を延ばせるか 世界が注目 最新研究

ハダカデバネズミの寿命は40年、ハツカネズミは2~3年で、ハダカデバネズミは老化しにくにことで知られている。老化しにくのはハダカデバネズミの細胞にある可能性が最新の研究で浮かび上がってきた。年をとると細胞は老化するが、ハダカデバネズミは老化した細胞を自動的に消滅させるメカニズムを持っていた。こうした仕組みを人間に応用できないかという研究が進んでいる。老化した細胞の中には炎症を引き起こすものがあり周囲に広がっていく。炎症が全身で起きることで動脈硬化などの加齢性の病気にかかりやすくなる。動物実験で老化細胞の治療的除去は健康寿命を延ばすために魅了的なアプローチかもしれないとの報告が相次いでいる。老化を食い止める研究開発には巨額の資金が流れ込んでいる。2030年までに健康寿命を延ばすことができた健康に対してアメリカの財団が約147億円を支払うという賞金レースがある。7月にエントリーが始まると411チームが開発競走に名乗りを上げた。こうした研究開発には巨大IT企業も出資するなど、市場規模は6兆円を超えるとの資産も出ている。

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OpenAIXプライズ財団サム・アルトマンジェフ・ベゾスハダカデバネズミハツカネズミピーター・ディアマンディス熊本大学

賞金レースに出資しているサウジアラビアの財団。出資予算は年間1400億円を超える。巨額の投資をするのは世界的にすすむ高齢化にいち早く対応するためだという。健康寿命を延ばす研究の中で注目されているのが3つの分野。実用化に近いとされているのが、老化を遅らせる物質。この分野の第一人者としてアメリカで研究をしている今井眞一郎さん。取り組んでいるのはNMNと呼ばれる物質を使って老化を遅らせる研究。マウスに投与すると高齢になっても活動が衰えないことがわかった。NMNはビタミンに似た物質で元々は体内に存在するものだが、加齢とともに減少し、臓器の機能低下につながる。人為的に補充することで臓器の機能を回復できれば老化を抑えられると考える。今井さんの研究グループは人への臨床研究を厳格に行い、安全性と有効性を確認したものを社会に広げていきたいと考えている。

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ヘボリューション財団マサチューセッツ州(アメリカ)ミズーリ州(アメリカ)ワシントン大学

3つの研究分野の中で最も多くの投資が集まっているのが、細胞の再活性化させる研究。アメリカのスタートアップ企業が独自に開発した薬をヒトの皮膚の細胞に使ったところ、老化した細胞が若い状態に戻るという結果が得られた。ヒトへの臨床試験はまだ先だが、すでに58億円が投資されている。

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カリフォルニア州(アメリカ)
健康寿命を延ばせるか 可能性は?課題は?

挑戦的な研究課題に取り組む国の大型研究プロジェクト「ムーンショット型研究開発制度」が実施されていて、その目標の1つに2040年までに健康寿命を100歳まで延ばすというのがある。中西真さんは、老化研究はまだはじまったばかり、得られた成果は動物を使った実験が多いのでヒトに応用していくこで少しずつ研究が進んでいくだろうと話した。新井康通さんは110歳以上の長寿者「スーパーセンチナリオン」は認知機能が高い、循環器系の老化が遅い、歩く機能が保たれているという。大部分は生活習慣や社会環境の要因だと考えられるという。今注目される抗老化研究、老化細胞の除去、老化を遅らせる物質、細胞の再活性化の3つ。

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ムーンショット型研究開発制度慶應義塾大学病院 百寿総合研究センター東京大学医科学研究所
健康寿命を延ばせるか “テクノロジー”の可能性

ジムに集まった高齢者たちが身につけているのはロボットスーツ。ロボットスーツは足腰の動作を補助するだけではなく。体が動かなくなる原因の一つは脳から出される信号が弱くなること。そこで脳からの信号を読み取るロボットスーツをつけて動作を繰り返すと、脳が信号を出せば体が動くと認識し、信号が強くなる。一部の病気などの医療用としては保険適用されているロボットスーツ、この技術を筋力が低下した高齢者の機能改善につなげられないかと実証実験が各地で行われている。

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つくば(茨城)

91歳の大堀悦子さん。使い始めたのは膀胱にたまった尿の量を測定する機器。体に貼った端末から出る超音波によって尿の量を数値化、排尿のタイミングを予測して知らせる仕組み。大堀さんが機器を使い始めたのは去年秋。入院し、介護が必要になったことがきっかけだった。明るく活発な性格だった大堀さんだが、介護が必要になると会話が減ってきたという。機器を使って失禁がなくなると、自ら家族に話しかけるようになったという。出先でも余裕を持ってトイレを探すことができて大好きだった旅行にも行けるようになった。

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松山(愛媛)
健康寿命を延ばせるか “テクノロジー”の可能性/健康寿命を延ばせるか「老い」と私たち

新井康通さんは失わせれた機能を薬で治療するのは難しいので、テクノロジーを活用するのはよい試み、社会とのつながりも重要、テクノロジーを使うことで社会とつながることができると思うと話した。中西真さんは健康で長く生きるのは多くの方の希望、そのための研究を続けていく必要がある、健康で長きする高齢者の生きがいや社会に対する貢献も考えていかなければならないと話した。

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