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今回の舞台は北海道帯広の競馬場。「ばんえい競馬」という一風変わった競馬が行われている。重さ最大1トンにもなるソリを引いて力強さを競い合う。走るのは、かつて農耕馬として活躍していたという大型の馬で、“ばん馬”と呼ばれる。みんなどんな思いで声援を送っているのか、3日間見つめてみた。
ばんえい競馬は帯広市が運営している。帯広競馬場で午後2時から撮影開始。レース開始前、人が集まっている場所があった。パドックから出てくる馬を待っている人たちだった。コースは直線200mと短いが、途中に大小2つの山がある。地元に住む86歳の男性がいた。いつもはテレビで観ているけど、今日は帰省している息子さんに連れてきてもらった。今井騎手という女性騎手にハマっているという。レース開始。8頭の馬が走り出した。通常の競馬と比べてゆっくりしたスピードで、観客たちは一緒に移動して声援を送ることができる。今井騎手は3着だった。1日に12レース行われる。一度走った馬は1~2週間休みとなる。第2レースの直前、1人で離れた所に立つ男性がいた。札幌に単身赴任していて、今日は遊びに来ている娘さんと一緒。さっきのレースも観ていたが、砂煙がすごかったので遠くから観ることにしたという。娘さんと予想した馬が見事一着となり馬券を換金したが、美味しいものを食べられるほどの額にはならなかった。自身の癌治療が成功したことを記念したレース名をお金を払ってつけた男性が、友人たちとともに来ていた。見事に的中させた。鋳造業の社員がネパールから来た新人を連れて来ていた。言葉なしでも伝わるものをまず見せようと思ったとのこと。夕方5時、残り5レース。大きなカメラを持った人に声をかけた。帯広畜産大学の写真サークルで、毎年撮った写真を競馬場の関係者に選んでもらってカレンダーを作るという活動をしているという。最終12レースは夜9時前に終了、競馬場の一日が終わった。
撮影2日目。朝6時、競馬場の人に練習場を案内してもらった。馬たちの祖先は明治時代、木材を運び田畑を耕し北海道の発展を支えたそう。ソリを引くレースもその頃に始まったんだとか。かつては北海道各地で行われていたばんえい競馬だが、今では帯広だけになっている。競馬場の敷地の外から馬の様子を窺う人がいた。ほぼ毎日来ているという男性だが、馬券は滅多に買わない。純粋に見るのが好きなのだという。競馬場は朝9時に開門する。馬券売り場の近くで座っている男性に声をかけた。広島県の高校教員で、「旅打ち」をしているという。夕方、男の子を連れた家族がいた。東京出身で馬好きの母親はかつて馬の仕事がしたいと北海道に1人で飛び込んだが、動物の死が受け入れられず泣いてばかりいるなど、思い描いたようにはならなかったという。競馬場には様々な声が響く。名前がかっこいいと買った馬が外れた男性、観光名所ということで来てみて一番高い3連単を買ったら当たった女性など。午後9時前、最終レースが迫る中、3人連れに声をかけた。札幌から車で4時間かけて来たという両親と息子さん。高校卒業後に道外に引っ越していた息子さんが帰ってきて、現在は9年ぶりに一緒に暮らしている。息子さんは今日初めてここに来て、馬も人も山あり谷あり、スピードが必要なこともあれば止まらなければいけないこともあるなどと感じたという。
撮影3日目。コースから遠く離れたスタンド席に1人の男性がいた。農業をしているという83歳の男性。トラクターなどに取って代わる前は農業にも馬が使われていたことなどを話してくれた。ばんえい競馬には65年ほど通っており、感謝の気持ちを持って馬を見ている。感謝の気持ちが伝わったのか、見事的中した。夜7時過ぎ、目立つ服を着た男性がいた。地元のコミュニティーラジオ局の局員兼パーソナリティーで、明るめの服を着れば運気も上がると聞いたとのこと。途中で止まったりする馬の姿に自分を重ね、感情移入してしまう。過去にいろいろあったが、現在は十勝の発展のために頑張ろうと思っている。馬券は外れてしまったが、今日も元気をもらえた。
「ドキュメント72時間」の次回予告。