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撮影初日。賑やかな地上とは打って変わって地下街はかなり静か。まるで異空間に迷い込んだかのよう。50mほどの地下街に20軒近くのお店がある。地下鉄銀座線の改札口につながっている。まず訪れたのは60年近く営業する焼きそば屋さん。アニメ演出家の男性が、出勤前に腹ごしらえしていた。続いて占いのお店を取材した。86歳の女性占い師が、午後2時から6時までの4時間だけ営業している。占いのお店の向かいに、若い人たちが集まっていた。体に電気と気を送り込む、電気気功のお店だという。立ち食いそば店に男性がいた。62年浅草で生きてきたという男性は、この地下街には番地がないということを教えてくれた。地上の風景は変わっても、ここはどこか昔のままだという。87歳の印刷店の店主がいた。昔の地下街の写真を見せてくれた。地下街ができたのは69年前で、時代に合わせて店は入れ代わってきた。1年半前にタイ料理のお店を開いたという男性は、老朽化でひび割れから水が湧き上がってきてしまう床の掃除をしていた。1時間に1回くらい行わないといけないという。5時を過ぎると改札には仕事帰りの人々が集まっていた。男性が1人、床屋さんに向かったが、休みだったので代わりに焼きそば屋さんに向かった。10時過ぎ、中古のレコード屋に集まっていた男性たちに声をかけた。仕事仲間と立ち食いそば屋に行った後に立ち寄ったという。夜、12時15分、銀座線の終電が出た後、地下街のシャッターは降ろされた。
撮影2日目。朝5時、地下街のシャッターが上がる。立ち食いそば屋さんは仕込みを始めていた。朝6時にお店が開くとすぐに人だかりができた。IT関係の男性が夜勤明けの食事をとっていた。昼夜逆転生活ならではの苦労として、彼女を作りにくいということを教えてくれた。9時半過ぎ、床屋さんの開店待ちの列ができていた。10時過ぎ、元気に挨拶しながらお店を開ける男性がいた。「ミスター借金」の文字がプリントされたTシャツを着ていた。めちゃめちゃ借金をしてお店をオープンしたこともあり、さらけ出していこうと考えたという。ここは地下街で2軒目となる焼きそばの専門店で、去年オープンしたばかり。地上より費用が格安なため、ここへの出店を決めたという。地下街にジャケット写真を撮りに来たという、特徴的な出で立ちのミュージシャンがいた。パラドックスの世界に住んでいる(という設定)とのこと。老舗の焼きそば屋さんで話し込む男性がいた。20年前に脱サラしてここで中古DVDなどを売るお店を始めたという。早朝から立ち続けていたおそば屋さんの店員は、幸せそうに券売機のお金を数えていた。新しい方の焼きそば屋さんにお客さんたちが入っていった。寄席を終えた62歳の芸人さんが、後輩を連れて飲みに来ていた。かつてはドリフターズの志村けんにも弟子としてお世話になったことがあるという。たまたま通りがかった別の芸人さんたちも合流した。
撮影3日目。開店前の老舗の焼きそば屋さんに小さな女の子がいた。店員さんの娘さん。春休みでちょっと遊びに来たらしい。母親は21歳から19年、ここで働き続けている。旦那さんは駅員さんで、ここで出会ったという。新しい方の焼きそば屋さんには「若いうちの苦労」というメニューがある。きのうも来ていた62歳の芸人さんが、注文した。「若いうちの苦労」とは、地下街の掃除だった。芸人さんは「お金を払って働くってすばらしいですね」と話した。夜は金曜日ということもあり、呑兵衛たちで賑やかになった。普段は不動産関係の仕事をしている男性が、金曜日だけ開いているという飲食店もあった。海外からの友人と焼き鳥を楽しむ男性がいた。明日から一緒にスキーに行くという。
「ドキュメント72時間」の次回予告。