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日本航空の関連会社で働く山田千紘さん(32)は20歳の時に電車に轢かれて右腕と両脚を失った。今回は絶望から立ち上がって歩き続ける青年の物語。
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山田千紘さん(32)は20歳の時に電車に轢かれて右腕と両脚を失った。義足は個性とポジティブに捉えて短パン姿で出歩く。休日のこの日は自宅近くの青果店にやって来た。キャベツ・レタス・大根・長ネギを購入した。買い物袋は使わずリュックに詰めた。リュックだと歩く時にバランスが崩れないという。山田は神奈川県出身。持ち前の明るさでクラスのムードメーカーだった。ケーブルテレビの営業マンとして働き始めた20歳の時、仕事帰りの深夜に駅のホームから転落して電車に轢かれた。目覚めたのは10日後。利き腕の右手と両脚を失っていた。真っ先に病院に駆けつけたのは就職してからあまり会えていなかった兄・辰弥さんだった。両親も付き添ってくれ、元気になって恩返しをしたいと思うようになった。1年かかるとされる義足歩行のリハビリを半年でやり遂げた。残った左手で文字を書く練習もした。「この身体で強く生きていく」と思うようになったという。山田は事故から2年後に一人暮らしを始めた。今では自炊もこなす。出勤の際には義手も装着する。ネクタイの結び方にはこだわりがあるという。混雑する前の電車に乗るため朝早く家を出る。職場は羽田空港。日本航空の関連会社で経理として7年働いている。山田の障害は最も重い一級だが、一般雇用として働き、他の人と同じ業務をこなす。広報用のSNSに投稿する動画の撮影と編集も自ら買って出た。
この日やって来たのは義足メーカー。数日前に電車内で押されて転倒。その時に義足のバランスがずれてしまったという。山田の義足はアイスランドのメーカー製。膝代わりになる左義足には人工知能が搭載され、転倒を予防し歩くアシストをしている。自身を持って歩けるようになったのは大きいと語った。富士山に登頂し、その様子は自身のYouTubeチャンネルで発信した。月に数回、各地に赴いて自らの体験を伝えている。三肢を失ってしまったではなく、左腕があると考えて挑戦することを躊躇しない姿に多くの人が勇気づけられている。石川宙さん(19)は11歳の時に難病に罹り左半身が麻痺してしまった。そんな時に目にしたのが山田のYouTubeだった。半身麻痺は個性だと考えることができるようになったという。
山田千紘さんは兄・辰弥さんを自宅に招待した。婚姻届の証人をお願いするためだった。3月15日に妻と一緒に大田区役所を訪れて提出した。この日は兄の誕生日だった。
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