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独特な世界観の女性はアメリカから来日中の新進気鋭の研究者である蒋霊均(ショウ レイキン)である。専門は日本美術史で10年以上に渡り、アートの視点から日本の歴史を見つめてきた。美術館の日本画展では解説員も務めるスペシャリストである。彼女は幻のカルタを深堀りすると意外な日本の一面が見えてくるという。カルタに魅了された日本人研究者が知られざる日本に迫る。
オープニング映像が流れた。
オレゴン大学後期博士課程に在籍する蒋霊均の来日は3度目である。カルタコレクションは3182点あるというが全て研究資料である。蒋霊均の熱心さに打たれ、貴重なコレクションを譲ってくれた人が多いとのこと。カルタは元をたどれば外国から持ち込まれた文化で、16世紀にポルトガルなどとの南蛮貿易でカステラや石鹸などとともに伝来した。その絵柄を真似、日本で最初に作られたカルタが「天正カルタ」である。蒋霊均が引き込まれたのは日本のカルタのデザインであった。日本美術史が専門だが美術史学は彫刻・絵画・建築から時代背景などを読み解く学問である。「カルタのデザインの変遷からローカライズを読み解く」とのことだがローカライズとはある国のものが別の国に伝わり、違う形にアレンジされていくことである。カルタもローカライズを通して日本文化になってきたという。カルタのローカライズをデザインの変化から紐解くのが蒋霊均の研究である。カルタのローカライズとはデフォルメ。伝来当初は西洋の女性だった札が江戸中期では全く別のモチーフに変化していた。時代が進むとデフォルメが進み、抽象的な形やデザインに変化していっていた。極端なまでに抽象化する絵柄の理由を当時の社会的背景から探るため、カルタの札だけではなく関連する文献や絵画も丹念に集めてきた。カルタの流行に合わせてデザインを簡略化することで大量生産を容易にしたというのが蒋霊均の見立てたカルタのローカライズである。
”熟覧”と撮影の許可をいただいたとのことだったが、熟覧とは特別な許可を得て博物館所蔵品を詳しく観察することである。今回、熟覧の許可が取れたのは江戸初期に作られた文箱である。伝統的な日本の道具にまでカルタの図案が使われていることに蒋霊均は注目した。そして大牟田市立三池カルタ・歴史資料館へやって来た。カルタ専門の資料館は全国でもここだけで17世紀から現代までの様々なカルタが展示されている。資料館の中を見ていき、バックヤードで熟覧タイムとなった。文箱にデザインされていたのは西洋の騎士と聖杯の札である。まだデフォルメが進んでいない伝来初期の頃の絵柄だという。伝来初期、舶来品のカルタは時代の最先端をゆく珍しいものだった。異国情緒あふれる西洋風のデザインに価値を見出していたと、蒋霊均は考察している。取り出したのは単眼鏡で距離を保ちながら細部を観察していた。すると聖杯が逆さまになっていると指摘した。この逆さま問題は文箱だけでなく、他のカルタの図案でも起きているという。カルタの歴史の研究者である江橋崇さんを訪ね、文箱を確認してもらうこととなった。逆さま問題を確認した上で切り出したのはまたローカライズの視点であった。蒋霊均は伝来初期のカルタにもローカライズの片鱗を感じていた。
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- 三池カルタ・歴史資料館福岡県
日本のアニメ好きが講じて、自らイラストレーターとしても活動する蒋霊均。カルタ研究で収集した資料の中にも魔法のような話があるという。カルタを火鉢に投げ捨てるとカルタの精霊が現れ、説教をくらうというストーリーとのこと。カルタを擬人化することでその流行りっぷりを描いた洒落本の一編である。江戸時代から昭和の始めにかけ、大流行したというカルタ。その繁栄ぶりを物語るものが青森県にあるという。三戸町の山奥を目指し、野瀬正観世音堂へ到着。江戸時代からある一族が代々守ってきたという社へ今回は特別に自治体が許可を取り付けてくれて見せてもらうこととなった。仏像を収める厨子の表面を覆うのがカルタであった。貼られていたのは黒札と呼ばれる昭和30年代まで東北地方で製造されていたカルタ札であった。賭博の道具としても使われたカルタは江戸時代後期に幕府から禁止されると、徐々に衰退していったという。人目に触れない裏側までをも隙間なく覆うカルタ札の数は900枚を超えていた。扉の全面に貼られた札は数札でトランプのように数字が割り振られ、数字が左右対称になるよう配置されていた。美しい配置が美術工芸品としての価値を高めていると蒋霊均は指摘する。御本尊が姿を現し、中から出てきたのは円盤型の「懸け仏」であった。蒋霊均は青森の調査で日本人が持つ遊び心だけではない価値観を見出したという。日本人ならではの精神性も世界に発信していく予定である。
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