- 出演者
- -
高校ラグビーの県予選大会でスタンドにはプレーを見ずに観客ばかり気にする1人の男性がいた。応援する観客の様子を細かく観察し、逐一ボイスメモで記録。彼はアメリカ出身の社会学者トーマス・ブラックウッドで専門は教育社会学である。ブラックウッドが世界でも珍しい教育方法として捉えているのが日本の部活動である。高校生3,700人にアンケートを実施し、部活の効果や影響を調査。浮かび上がったのは日本の経済発展の裏には部活の力があったという仮説である。多くの日本人が当たり前のように接してきた部活だがそこに隠された謎にアメリカ人研究者が迫る。
オープニング映像が流れた。
この日ブラックウッドが訪れたのは高校ラグビーの強豪校である。部活の調査を行うというので同行させてもらうことになった。ブラックウッドの調査の基本は観察で練習やプレーだけでなく、全てに細かく目を向ける。到着早々注目したのは白線を引く部員である。「なぜ生徒自らが白線を引くのか?」が疑問となっていた。続いて体育館へ向かうと部員を見習ってブラックウッドも靴を脱ぎ揃え、そこでは1年生部員の練習が行われていた。ここでは「コーチはやさしい言い方をする」が疑問となった。練習内容より話し方や作法にこそブラックウッドの驚きがあるという。グラウンドで練習試合が始まり「なぜ声かけをし続けるのか?」が疑問となっていた。さらに移動して隣のグラウンドへ行くと野球部が練習をしていた。野球部の練習にはまた別の驚きがあり「グラウンドにお辞儀するのが不思議」とのこと。ブラックウッドの専門とする教育社会学は社会と教育の関係を分析する学問である。部活にこそ日本の教育の独自性が詰まっていると感じ、25年前から調査を始めた。ラグビー部では練習試合が終わりを迎え「自分でどうにかしないと成長しない」と言われていたのが疑問となっていた。ブラックウッドの調査はグラウンデッド・セオリー・アプローチという手法をとっている。現場では先入観を持たず、現象やその疑問だけを記録していく。分析はデータが十分に集まってから初めて行う。先入観に流されず実際の現場を見ていくからわかることがあるという。
- キーワード
- 埼玉県立熊谷工業高等学校熊谷(埼玉)
1980年代、世界をメイド・イン・ジャパンが石鹸した。なぜ日本経済は強いのか、世界中で行われた日本研究の社会学の分野ではその背景にはるのは「受験制度」だと分析された。1993年にブラックウッドは高校の英語教師として来日し、部活に励む生徒たちと初めて接した時思いも寄らない驚きがあったという。高校生の多くは受験勉強をおろそかにしてでも部活に打ち込んでいるように感じたという。この気付きがブラックウッドを社会学者の道に進ませた。2009年から3年かけて運動部・文化部問わず、全国3,753人にアンケート調査を実施。するとブラックウッドにとって意外な答えが上位に並んだ。これをもとにブラックウッドは論文を発表し「部活が進路や自己認識 価値観と強く関係がある」と結論した。そして受験よりも部活のほうが日本の教育の根幹だと考えるようになった。だが1つ大きな疑問「なんで一生懸命がんばるのか?」も残っていた。Cognitive Distanceは自分の信念と現実の行動との矛盾による不快感でもし3年間試合に出られずに過ごしたらその心には不協和が生まれないのだろうか。その調査の対象として注目したのが女子マネージャーである。運動部の多くでは女子マネージャーが部員をサポートしている。彼女たちは常にサポート役で試合に出ることはない。あらゆる雑用を任され、とてつもない仕事量をこなしながら部員とともに過ごしている。研究において未成年を調査対象にするのは心理面のケアやプライバシーの保護など多くの問題が伴う。そこで深いインタビューをする場合はOB・OGなど成人した元部員を調査対象にするという。卒業から時間が経ち、自分の経験を客観視できることもありこうした形で話を聞くことは非常に有効だという。元サッカー部マネージャーの女性に話を聞くと「マネージャーがいないと部活が成り立たない」ということがわかった。元野球部マネージャーの女性に話を聞くと「やることがないとつらい」「忙しいほうが意義を感じられる」「やり直せるならまたやりたい」「全部が報われた」とのことだった。ブラックウッドが指摘するのは社会心理学の主観的幸福という考え方で自分が幸せだと認識できれば認知的不協和の解消につながるという。マネージャーが一番得られたと思ったのは思い出で「青春っぽい」とのことだった。実は「青春」という言葉は15年前に論文を書いたときにも気になっていたキーワードで論文には「夢 努力 青春にひかれた」と記されていた。
現在、日本の大学で教授職にあるブラックウッド。週2回、日本社会についての講義を行い生徒は欧米・アジア・中南米からの留学生である。授業の終わりに青春とは何か、彼らに聞いてみた。「高校生はこうすべき」という概念とはその時あることを思い出した。それは1998年に行われた高校野球の青森県予選で深浦高校が0対122で敗北した試合である。当時、多くのメディアが青春の象徴として取りあげていた。ブラックウッドが奇妙に感じたこの騒ぎ、同じ頃たまたま1冊の本を読んでいた。それはイギリスの日本文学研究者によって書かれたものである。源義経や西郷隆盛など敗北しても日本人に愛される英雄たちを論じた作品である。そこでの疑問は「勝ちようがないのにがんばる」とのこと。負ける時に美しさを見出すという日本人の象徴が高校の協議会の多くがトーナメント制の大会であることだとブラックウッドは指摘する。これからどう変わっていくのか、何が残っていくのか、ブラックウッドはこの先再び大規模な調査を計画している。
「最深日本研究」の番組宣伝をした。
「弾丸ツアーでSHOWTIME!大リーグ超満喫法」の番組宣伝をした。
「MUSIC GIFT 2025 ~あなたに贈ろう 希望の歌~」の番組宣伝をした。
「プレミアムシネマ 放浪記」の番組宣伝をした。
「原爆裁判 ~被爆者と弁護士たちの闘い~」の番組宣伝をした。