- 出演者
- 神尾晋一郎 野口葵衣
その動きからわたしたちが地動説を知ることになった火星。いま、数々の探査から火星の知られざる姿が明らかになっている。生命の証拠、地下に水がある、など。ゆくゆくは火星で暮らすという目標のために、光のいらない植物生産システムなどのアイデアも生まれている。火星は、わたしたちにさらなる学びをもたらそうとしている。
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火星からみた地球は点にすぎない。それもそのはず、地球と火星との距離は平均2億2500万km。火星までかかる時間は片道でも最短8か月といわれている。途方もない距離の移動をどうやって実現するのか。じつはいま、それを現実にしようとするロケットの開発がすすんでいる。
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火星行きの実現を目指すロケット・スターシップが2024年10月13日の打ち上げで、無事宇宙空間に到達。ロケットの回収にも成功した。スターシップの燃料はメタン。性能を上げるのが難しいとされるが、火星に多く存在するため現地調達が期待できる。燃料節約のため、着陸脚を省略して軽量化をはかった。成功なれば、アポロ計画の月面着陸をはるかにしのぐ成果となる。ロケット開発を率いるスペースX社CEOのイーロン・マスク氏は「人類を火星に連れて行く」「成し遂げられると確信している」と自信をのぞかせた。
ロケットを再利用する試みについて、山崎さんは火星に行くには日本のH3ロケットなどの2倍の規模のロケットが必要になると紹介。マスク氏は2050年までに火星に100万人都市を作ると言及し、アラブ首長国連邦も2117年までに火星に60万人都市を作るとしている。臼井さんは火星について、圧力は地球の100分の1であり、組成も96％が二酸化炭素となっていると紹介し、大気や磁場が薄い事で放射線ですぐに死んでしまうような環境としている。地震が地球にあるように火震と呼ばれるものがあるという。火星には2つの月があり、1つは西から・1つは東から上がるのだという。
2018年には火星にインサイトという探査機が送られている。火震という火星の揺れを把握することで火星の内部構造を把握する検証を行っているが、石の片側から振動を与え反対側から出てくるまでを計測しているが、内部に空気や水が詰まっているかで波形も大きく変わるのだという。そして、片山郁夫氏は火震の情報から火星には水がある可能性があると言及している。深さ10～20kmという場所に水はあるのだといい、それを探るために火星の月・フォボスの探査を進めている。フォボスに着陸してサンプルを採取し地球に持ち帰るという試みが成功すれば2031年に火星圏からのサンプルリターンとなる。
火星から持ち帰ったサンプルの詳しい分析から火星の水分量を推測することは可能だといい、火星の大気が40億年以上かけてどこまで少なくなったかを把握することも可能という。太古の水の量と失くなった水の量を比べることで現在の水の量を把握することが可能という。分かっているだけで火星の極め冠の氷が解ければ20mの厚さの水が存在する可能性もあると臼井さんは紹介。地下にも水は存在することからさらなる水が存在することが期待される。ISSでは1人あたり1日3Lの水に使用料が限られ、汗や尿も飲水に再利用されていると山崎さんは紹介している。
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火星探査では水以外にも2021年に着陸したパーシビアランスがクレーターの縁でリン酸鉄を発見した。リン酸鉄は地球上では微生物の働きによって生まれるとされていて、このことから火星にも生命活動があった可能性が浮上した。他にも窒素・硫黄・有機物を発見していて、生命維持活動に必要なものが揃っていることが確かめられつつある。
火星には水と有機物があることが近年の探査で分かり、生命活動が行われた可能性が指摘されている。他にもエネルギー源として利用できる酸化剤も見つかっていて、宇宙人の存在証明につながるかが期待されている。
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火星に送られたMOXIEという装置は熱を使用して10時間二酸化炭素を活用して人が5時間生存できる量の酸素を生成することに成功した。
NASAでは現在菌糸と木くずを活用した素材の開発を進めていて、いずれは火星の砂と菌を結合して居住地を作ることを目標にしている。火星の砂と結合した菌糸は僅かな栄養で成長を続け、自己修復可能な住居や家具類などを作ることができるという。
菌糸を使うことによって食器や洋服などが作れるという。山崎さんは「菌糸は乾燥している火星には相性が良い」などと話した。ただ臼井さんは「惑星保護の観点から菌を他の星に持ち込むことはかなり慎重な姿勢がとられている」などと話した。
建築家のクリス・マウアーさんは「菌糸は食料だけでなく持続可能な材料として住宅までできてしまう」などと話した。マウアーさんは実際に菌糸を使ったレンガを用いて家を造ったという。砂漠化が深刻化するナミビアで菌を使ったプロジェクトを進めようとしているとのこと。
宇宙での暮らしを念頭に置いた食品開発も進んでいる。中でも注目されているのが光を用いない植物栽培。植物は光合成で生きているのが常識だが、光合成では光エネルギーの1％ほどしか取り込まれないという。開発者のロバート・ジンカーソンさんは酢酸を使うことで光や二酸化炭素なしで栄養を作れると考えた。実験では見事に暗闇でも野菜が育ったという。ロバートさんいわく、この方法ならエネルギー効率を光合成の4倍まで高められるとのこと。さらにロバートさんは宇宙での栽培を見越して植物のサイズを小さくする研究も進めている。
肉や魚などから得られるたんぱく質の接種も課題となるが、たんぱく質は二酸化炭素から生み出すことが可能なのだという。二酸化炭素を栄養源にして増える微生物から生成したアイスクリームやクッキーはすでにシンガポールでは展開されているのだという。畜産業は水の消費や環境への影響が大きいものの、これの解決にも期待がかかると山崎さんは紹介。
ケリー・ハストンさんはNASAが開発した火星生活を模擬した環境で378日を過ごしたという。未開の地にやってきた探検家のようだったと振り返り、衣食住の追加補給がなく、外部との通信も最大22分の時間差がある中で暮らすこととなった。そして、378日後には全員が無事に元の生活へと戻ったものの、ケリーさんは最初のひと月は大変だったが人間が潜在的に課題や困難を克服する能力を備えていると実感することが出来たと振り返った。NASAは基地だけでなくゲートウェイを建設し、これを中継地として火星行きをたぐり寄せようとしている。
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