住宅の診断を行う会社が持ち主から依頼を受けて、建築中の住宅を調査したところ、見つかった不具合は7割以上。人手不足の中で一定の技術を持たない大工まで現場にまで入っていることが原因とみられる。なぜ大工は不足しているのか?背景には住宅産業の変化がある。50年以上大工として働いていてきた赤池公光さん、73歳。がんの治療中だが、仕事の依頼が絶えず働き続けている。赤池さんは多くの大工と同じく一人親方という個人事業主。1980年代ごろまで大工の多くは客から直接注文を受けて棟梁として弟子を使いながら家を建てることがほとんどだった。かつては赤池さんも3人の弟子を抱えていた。しかし、バブル崩壊で新築住宅の着工数が減少、注文が住宅メーカーに流れるようになった。住宅メーカーは建築を工務店に委託し、工務店は個人事業主の大工に委託し、大工は2次下請けとして家を建てることが多くなった。木材加工ではプレカットが登場し、大工による現場での加工は不要になり、大工の仕事は組み立て作業が中心となった。赤池さんは収入が減少し弟子をとれなくなった。29歳の大工・中山永斗さん。仲間の多くはいくつもの現場を掛け持ちしないと生活が成り立たないという。200年代、住宅産業にビルダーという不動産会社が参入し、土地とセットで販売される分譲建売住宅が増えていった。住宅価格が低く設定され、下請けの大工はコストダウンを強く求められるという。現在、個人事業主の大工の4割は年収400万円未満。日本の平均年収より低くなっている。