2024年7月2日放送 19:30 - 19:57 NHK総合

クローズアップ現代
大工不足で家が建たない?修理できない!?相次ぐ住宅トラブル

出演者
桑子真帆 
(オープニング)
住宅のトラブル 意外な原因とは?

住宅のトラブルには意外な原因があった。1800万円でリフォームした住宅、雨漏りが発生、さらに不具合が30か所以上見つかった。新築マイホームの引き渡しが大幅に遅れた家族も。原因は大工の人出不足。

オープニング

オープニング映像。

家が建たない?修理できない?大工不足で住宅トラブル
深刻化する大工不足 ピーク時の3分の1

木造住宅の建築や修理をする大工の数が大幅に減少している。80年代には90万人以上いたが、現在はピーク時の3分の1で30万人を割り込んでいる。

住宅トラブルの陰に 大工が足りない!

大工不足でトラブルに見舞われたという女性。4年前に戸建て住宅を新築し、家族4人のスケジュールに合わせて建築計画を立てた。完成を2カ月後に控えた時に引き渡しが遅れると伝えられた。住んでいたマンションは売却済みだったため、家族は退去しなければならなかった。2か月間、仮住まいを転々とすることになった。損害は100万円以上ですべて工務店が負担してくれたが、家族の負担は大きかった。大工不足は施工の質の低下も引き起こしている。2年前に1800万円をかけてリフォームをしたという家。雨漏りが発生、雨どいの裏にひび割れなど見つかった不具合は30か所以上。のちに、人手不足で経験の浅い大工が施工していたことがわかった。

なぜ大工が不足?「一人親方」の限界

住宅の診断を行う会社が持ち主から依頼を受けて、建築中の住宅を調査したところ、見つかった不具合は7割以上。人手不足の中で一定の技術を持たない大工まで現場にまで入っていることが原因とみられる。なぜ大工は不足しているのか?背景には住宅産業の変化がある。50年以上大工として働いていてきた赤池公光さん、73歳。がんの治療中だが、仕事の依頼が絶えず働き続けている。赤池さんは多くの大工と同じく一人親方という個人事業主。1980年代ごろまで大工の多くは客から直接注文を受けて棟梁として弟子を使いながら家を建てることがほとんどだった。かつては赤池さんも3人の弟子を抱えていた。しかし、バブル崩壊で新築住宅の着工数が減少、注文が住宅メーカーに流れるようになった。住宅メーカーは建築を工務店に委託し、工務店は個人事業主の大工に委託し、大工は2次下請けとして家を建てることが多くなった。木材加工ではプレカットが登場し、大工による現場での加工は不要になり、大工の仕事は組み立て作業が中心となった。赤池さんは収入が減少し弟子をとれなくなった。29歳の大工・中山永斗さん。仲間の多くはいくつもの現場を掛け持ちしないと生活が成り立たないという。200年代、住宅産業にビルダーという不動産会社が参入し、土地とセットで販売される分譲建売住宅が増えていった。住宅価格が低く設定され、下請けの大工はコストダウンを強く求められるという。現在、個人事業主の大工の4割は年収400万円未満。日本の平均年収より低くなっている。

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さくら事務所山梨県
大工が足りない!災害現場からの悲鳴

大工不足の影響をより深刻に受けているのが、災害現場。石川県輪島市では先月、仮設住宅の建設に必要な大工や職人を確保するのが難しい状況だった。建設業の労働組合を通じて全国から大工を募集。多いときは200人以上が不足していたという。1万5000棟が被害を受けた七尾市では住宅の修理も先が見えない。自宅が中規模半壊の被害を受けた上山秀郎さん。トイレの壁にはヒビが入り、自分で応急処置をした。早く安心して暮らしたいと考えているが、年内の修理は難しいと言われている。地元の大工には修理の依頼が殺到している。大工の石橋良和さんは地震発生依頼、毎日のように住宅の修理で現場に出ている。現在抱えている仕事は40件以上で全て終わるには2年はかかると考えている。

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七尾(石川)輪島(石川)
深刻化する大工不足 なぜ?今後の影響は?

蟹澤宏剛さんは大工が不足する中で今後2035年ぐらいになると今の半分まで大工が減ると計算されている、建物の省エネ化、耐震改修などが必要な建物が出ているのに対応できる大工がいなくなるのが大きな懸念だという。大工は住宅メーカーや工務店にはいなく、その下請けとして個人事業主という立場で働いている、大きな組織と個人が契約する中で仕事をしているので立場が弱くなってしまうという。住宅生産団体連合会は労務費がコストダウンの原資とされる状況を改善することが重要、旧熊依然とした現場環境や3労務費の日当払いが当たり前という業界慣習を改善する必要があるとしている。大工は高齢化が進んでいて、43%以上が60歳以上。

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住宅生産団体連合会
若い大工が集まる カギは“社員化”

都内の工務店で働く13人の大工のうち20代以下は9人。若い人が集まるきっかけとなったのは大工の社員化。個人事業主が多い大工を社員として雇用、給与やボーナス、社会保険なども整えた。社員化することで、労働時間も適切に管理されるようになった。入社3年目の大村駿翔さん、21歳。現場につくとスマホで出勤時間を記録する。業務報告は全てウェブ上で共有することで、労働時間を短縮している。技術の習得を可視化する仕組みもあり、レベルに伴い給与もあがる。埼玉県の住宅メーカーでは朝6時、新人たちがランニングをする。会社が作った建築技術訓練校で朝が早い大工の生活に慣れるため。社員として入社したあと1年間は寮生活で学ぶことが仕事。会社からは給与も支給される。訓練校の目的は技術や知識を集中的に学ぶこと。徒弟制とは異なり、講師が基礎から教える。訓練を受けて早ければ6年で独り立ちできるという。かつで訓練校で学んだ河野由昭さんは注文住宅を担当し看板大工の一人となった。息子の将路さんもこの会社で父と同じ大工の道を歩んでいる。

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ポラスグループ岡庭建設練馬区(東京)越谷(埼玉)
深刻化する大工不足 担い手を増やすには

大工を社員化する流れは大手住宅メーカーにも広がっている。蟹澤宏剛さんは担い手を増やしていくには、社員化は大事、中小企業がやるのはハードルが高い、欧米には組織がありみんなで人を育てる仕組みがあるという。先月、建設業法が改正された。建設現場で働く人たちの労務費に目安を設けたり、著しく短い工期による契約を禁止するとした。

仮設住宅の建設現場 若い大工が汗を流す

大工が不足していた輪島市の仮設住宅の建設現場に各地から大工がかけつけていた。その中に東京からきた若き大工・大村駿翔さんの姿があった。

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輪島(石川)

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