- 出演者
- 桑子真帆
薬局に薬がない状態が3年も続いている。薬不足のきっかけは相次いで発覚した品質不正問題、薬の供給が不安定になった。その後も供給は解消されず、不足している薬の数は約3800品目。医療用医薬品の2割を超えている。
オープニング映像。
どんな薬が不足しているのか?解熱鎮痛剤、せき止め薬、胃薬、抗菌薬、通風治療剤など複数。なぜ未だに薬不足が続いているのか?
薬不足に直面する都内の薬局。1人の母親が子どもの抗菌薬を求めてやってきたが薬はない、せき止め薬がなくとなりの神奈川県からやってきた男性もいた。この日、午前中だけで6組の患者が薬を手に入れらないまま薬局をあとにした。薬棚には在庫がほとんどないケースもある。去たん薬がようやく入荷したが4~5人分ほどしかない。感染症の流行で需要が高まっているがメーカーからの供給が不足している。なぜ供給が追いつかないのか?
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- 港区(東京)
去たん薬を製造する中堅医薬品メーカー。薬不足の対応を迫られる中、工場には緊張感が漂っていた。去たん薬は厚生労働省から増産を求められているが、十分な量を実現できていない。この会社が増産を慎重に進めるには理由がある。工場では89品目もの薬を作っている。去たん薬を増産すると、ほかの薬を減産しなければならない。ほかの薬が納期に間に合わくなる可能性も出てくる。増産のために設備投資をして、生産ラインを増やすことはできないのか?設備投資にお金をまわすことができない理由は去たん薬が利益が出にくい薬だからだという。日本では薬の価格は国が決める。薬価を負担するのは国や患者など。国は医療費負担を減らすため、毎年薬価を見直して引き下げている。発売してから時間がたった去たん薬のような薬はメーカーにとって利益の薄い薬になってしまう。去たん薬を増産させるために追加勤務を現場に打診したが、人手頼みにも限界がある。薬価の仕組みが変わらなければ状況は改善しないという。
メーカーは薬価を見直さなければならないとしている。坂巻弘之さんは今の薬価は低い、一部は採算がとれないものもあるという。今年4月の薬価改訂では1943品目については薬価を引き上げた。例年に比べると数は多いという。国が薬価を見直すうえで判断の元にしているのは製薬会社、薬局などの取引価格。ここで価格競争が起きて過熱すると取引価格が大幅に下がり、それにともない薬価も下がるという流れがある。坂巻弘之さんは薬の安定供給をするのは企業の使命だが、原因が多岐にわたるのですぐに解決するのは難しいという。
大手製薬会社の工場である薬の安定供給に向けた国家プロジェクトがはじまっている。国が重要な物資として指定したペニシリン系抗菌薬の原料を国内で生産する計画。現在、この会社は原料を中国メーカーに頼っている。30年前に撤退した国内生産を復活させるという取り組みのきっかけは5年前のトラブル。別の抗菌薬を生産する会社が海外から原料を輸入できなくなった。理由は中国メーカーが製造状のトラブルを起こし出荷できなくなったため。その結果、日本は抗菌薬不足に陥った。現場の医師たちは抗菌薬不足で手術を延期せざるを得ないケースも出た。この会社では残されていた設備を活用し、来年度に国内生産の再開を目指している。問題はコスト。国内産の原料は中国産に比べて5~8倍のコストがかかる。
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- Meiji Seika ファルマ
安定確保が必要な薬の成分のうち、約7割が海外に依存しているという実態がある。坂巻弘之さんは国内製造の問題はコストがかかること、薬価以外のことを考える必要がある。サブスクリプションモデルという一定の国が買い上げる仕組みがある。これにより、コストを補填し、企業は安定供給につなげることができる。坂巻弘之さんは原薬の調達の仕組みを柔軟化、複数化することが必要だと話した。
効果が期待できる新薬があるのに使えないという喜多功さんは6年前に難治性のがんと診断された。日本には有効な薬が存在せず、3種類の抗がん剤を試したが効果はあがらなかった。海外には喜多さんのがんに効果が期待されている新薬が存在する。設立から日の浅いアメリカのバイオ企業が開発し、4年前に承認された。治験では8割の患者のがんが縮小し、喜多さんおがんに効果が期待されている。薬の値段は日本円で月500万円以上。現在、この薬は日本の保険制度の元では使えない。製薬会社から保険適用に必要な手続きがとられていないため。個人で輸入することはできるが、高額な費用を自己負担する必要がある。日本の保険制度で使用できない新薬は増加している。アメリカで承認された抗がん剤の7割近くが日本では承認されていない。なぜ日本に新薬は届かないのか?
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- ウィスコンシン州(アメリカ)三重県
海外の製薬会社に勤めた桂淳さん。背景の1つには新薬を生み出す担い手が大手のグローバル企業だけでなく新興企業にも広まったことがあると指摘する。従来、新薬作りを主に担っていた大手グローバル企業、日本支社を通じて申請して治験・販売するのが一般的だった。一方、近年台頭してきた海外の新興バイオ企業は歴史が浅く資金が潤沢ではないため、多くが日本に拠点がない。日本での治験や販売にノウハウもないため申請が見送られ、患者に薬が届かないという。この会社ではこうした事態を解決するため有望な新興企業を誘致しようとしている。この日、面談したのはイギリスの新興バイオ企業だったが、日本への参入は時間をかけて検討するという結論にとどまった。
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がんの新薬が使えずにいる喜多さん。今使えるのは従来からある抗がん剤だけ。望むような効果を期待するのは難しく徐々に悪化してきている。
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新薬が使えない理由は、従来は審査に時間がかかるからだと指摘されてきたが、現在は海外企業から申請が行われにくくなっている。国は対策として、革新的な新薬を日本に迅速に導入した場合、薬価を加算する、承認手続きに関する相談窓口の設置など、行っている。坂巻弘之さんは日本で使えない薬の多くはベンチャー企業、対策はことしからのものなので時間がかかるだろうとした。患者申し出医療精度という、海外で承認された薬を日本で承認される前に例外的に使える仕組みがある。