2024年6月10日放送 19:30 - 19:57 NHK総合

クローズアップ現代
知らない間に火葬された“あふれる遺体”相次ぐトラブルの実態

出演者
桑子真帆 
(オープニング)
知らない間に火葬!?相次ぐトラブルの深層

家族が知らない間に火葬されていたというトラブルが全国で相対いでいる。背景にあるのは急増する一人暮らしの高齢者の死。死後の手続きや対応にあたる自治体を取材すると、かつてない異変が。

オープニング

オープニング映像。

知らない間に火葬された “あふれる遺体”相次ぐトラブルの実態
知らない間に火葬!?相次ぐトラブルの深層

去年全国で亡くなった人は159万人を超えて過去最多を記録、多死社会となっている。親族なのどに連絡がないまま自治体が火葬を進め、後でトラブルになる事態がこの5年で少なくとも14件起きていた。

仕事でオーストラリアに住んでいた近藤由理さん。茨城県で一人暮らしをしていた母と日常的にやり取りをしていたが、突然返信がなくなり電話に出なくなった。由理さんは友人に頼んで警察に通報し、家の中を調べてもらったが母の姿はなかった。由理さんは救急搬送の記録を調べると、突然の血管の疾患で亡くなっていたことが分かった。由理さんはすぐに帰国すると、母が火葬されていたことを知る。母は自宅のある鹿嶋市から隣の神栖市の病院に搬送されて亡くなっていた。病院は由理さんに対して母のスマホのロックが解除できず、連絡ができなかったと説明している。遺体の引き取り手がわからない場合、亡くなった場所の自治体が火葬などを行うことが法律で決められている。今回は病院のある神栖市が行うことになった。神栖市は自宅のある鹿嶋市に対し、親族の情報提供を依頼した。鹿嶋市からは長女の登録されている電話番号が使われていない、親族が確認できなかったとのこと。その結果、神栖市はすぎに対応できる身寄りはないと判断し、亡くなった2日後に火葬した。その後、由理さんは無縁墓地に収められていた母の遺骨を引き取り、改めて葬儀を行った。

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神栖市神栖市(茨城)鹿嶋市(茨城)

京都で一人暮らしをしていた今西一さんはおととし、心筋梗塞で亡くなった後、京都市に身寄りなしと判断され火葬された。今西さんの自宅から車で10分ほどのところには弟夫婦が住んでいて、亡くなる5日前にも会っていた。弟夫婦は京都市に経緯の説明を求めた。京都市では葬儀を行う人がすぐにわからない場合、戸籍を調査して親族を探す運用を行っている。今西さんの戸籍に記されていたのは亡くなった両親だけで、弟の名前はなかった。弟は結婚を機に親の戸籍を外れていた。弟の存在は古い戸籍に記載があったが調査に時間がかかるため、京都市はそこまで行っていなかった。

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京都市京都府今西一
遺体めぐるトラブル 背景に自治体の負担?

遺体トラブルの背景にあるのは自治体の負担が増していること。名古屋市では身寄りがないなど引き取り手がなく市が火葬した遺体は10年で約5倍に増加し、昨年度は300件となった。この日も自宅で亡くなった1人暮らしの70代の男性について、引き取り手となる親族を調査していた。親族調査には1ヵ月から半年ほどかかる場合があるという。親族が見つかった場合は手紙で引き取る意思があるの確認するが、返事があるのは稀だという。親族を探す間は遺体は葬儀会社に預け冷蔵庫で保管される。増え続ける引き取り手のない遺体への対応はどうあるべきなのか?

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名古屋市名古屋市西区役所
知らない間に火葬!?なぜ相次ぐ?深層は?

アンケートによると、引き取り手のいない遺体の火葬件数はこの5年で37%増加し、昨年度は約1万2000人となった。保管や火葬などの費用負担も増えていて、年間60億円あまり。自治体が親族の確認をしている間に葬儀会社が保管する費用などがかかる。費用を抑えるために速やかに火葬をせざるを得ないというケースもある。職員が限られる中で事務負担も増加していて、遺体を冷蔵庫で保管し3年あまり放置してしまった事態もあった。遺体の引き取り手がない場合は、自治体が火葬するよう法律に定められているが、親族をどこまで調査するのか、どのタイミングで火葬するかなどの具体的な規定がないため、自治体によって対応方法がバラバラ。アンケートを行った9割超の自治体が国の統一ルールが必要だとしている。

どう防ぐ“火葬トラブル” 本人の備えや対策は?

横須賀市役所に引き取り手のない約200の遺骨が保管されている。こうした遺骨を少しでも減らしたいと10年前から就活サポート事業を行っている。一人暮らしで頼れる親族がいない人などを対象にした事業。本人が元気なうちに、亡くなったときに知人への連絡はどうするか、葬儀はどこに依頼するかなど希望を聞き取り計画書にまとめる。火葬、納骨などの費用27万円は事前に支払ってもらう。89歳の佐古正枝さんは夫を早くに亡くし子どもはいない。佐古さんは2年前に事業に申し込みをした。市は3か月ごとに訪問し、変更の希望がないか確認している。この事業にはこれまで約150人が登録。佐古さんは事業に申し込んだことで不安なく過ごせるようになったという。先月、利用者の79歳の女性が亡くなった。担当してきた市の職員が出棺を見送る。女性の希望は先だった夫と一緒に共同墓地に入りたいというものだった。

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横須賀市横須賀市役所横須賀(神奈川)
どう防ぐ“火葬トラブル” 本人の備えや対策は?/加速する多死社会 必要な“準備”とは?

火葬トラブルに対して本人にできることは、緊急連絡先はアナログ、情報は自分から自治体に預ける、自己決定して人に伝えるなど。一人暮らしの高齢者は増え続けている。鎌田實さんは一人暮らしの人たちは楽しんでいてさみしくないと言う人もいるという。行政への過度な負担は政府が検討しなければならないと話した。

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