- 出演者
- 桑子真帆
地方からの女性の流出が止まらない。ある街の結婚相談所では婚活イベントを前に女性が集まらずにいた。人口減少が進む中、国が地方創生の旗印を掲げて10年、この間若年世代の流出はほとんどの地域で女性が男性を上回っている。なぜ女性たちは地方を去るのか?
オープニング映像。
今年4月、消滅可能性自治体と指摘された744の自治体。消滅の根拠とされるのが、20・30代の若年女性の人口減少。将来の出生数が減り、自治体として意地できなくなるとされている。消滅危機が10年前にはじめて指摘され始まったのが地方創生。国は基本目標の一つに結婚・出産・育児の希望をかなえることを掲げた。自治体を年間30~100億円の予算をあてて支援したきた。先週の政府の報告書では、大きな流れを変えるに至っておらず地方が厳しい状況にあることを重く受け止めるとしている。
この春、消滅可能性自治体とされた富山県入善町。今月開かれた議会では質問が相次いだ。町長の笹島春人さんは2014年に就任した。人口減少を止めるには子育て世代への支援を手厚くし、出生数を維持することが不可欠だと考えてきた。3年前に約6億円をかけて屋外施設を作った。国が掲げる切れ目ない支援を実現しようと国の交付金に独自の予算を加え、支援を充実させてきた。しかしこの10年、街から流出する若年女性の割合は2倍以上に増加し、出生数は半分以下に減少した。子育て支援は若年女性の引き止めにはつながらなかった。この10年、地方から東京圏への若年世代の流入は男性でも一貫して続いてきた。女性の流出は男性を常に上回っている。若年世代の流出超過は33の道府県で男性より女性が多い。女性に偏る人口流出は地方に何をもたらすのか?
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- 入善町(富山)
若年女性の流出が男性の1.4倍である長野県の街では最近婚活イベントに女性がなかなか集まらないという。1年前から婚活イベントに参加している男性は出会いがなく、結婚を諦めはじめていた。
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- 山ノ内町(長野)
女性はなぜ地方から去るのか、当事者の目線から考えようというプロジェクトがはじまった。立ち上げたのは山梨県でITの仕事をしている山本蓮さん、24歳。人口減少の原因が若年女性にあるとされることに違和感を抱いてきた。地方を去った女性の声をSNS動画にして広く届けようとしている。きっかけは3年前に地元・山梨で就職活動をしていたとき、会社でやりたいことができないと聞き、自分の意志だけではどうにもならない環境があると感じた。これまで約50人に話しを聞いてきた。この日は都内で働く岩手県出身の女性の話を聞いた。仕事を頑張りたいと思っても結婚や出産を押しつけられる、多くの女性が息苦しさを感じていた。地方に残りたい気持ちを削ぐ見過ごせない要因が、地域での女性の役割を務める母や祖母たちの姿。山本さんはこうした声を発信することで、自分たちが感じてきた溝を埋められないかと考えている。人口戦略会議副議長の増田寛也さんは、伝統的な価値観が若い女性にとって重苦しいもののように感じられる、しきたりを変えて開放的にしていくことが必要だと話す。
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- 韮崎(山梨)
国や自治体が目指してきたのは結婚・出産・育児の希望をかなえるという政策だったが、現実は働きがいある仕事につきたい、結婚や出産に干渉しないでほしい、地方の役割を押しつけないでほしいという声だった。小安美和さんは当事者の声が政策に生かされていないと感じている、女性の生き方は多様化している中で声を無視した政策がたくさんあり結果としてギャップが生まれてしまったと話した。女性の理想のライフコースは40年ほど前は専業主婦が主だったが、現在は仕事と育児の両立が理想となっている。時代によって意識が変わってきている。若年層・女性の正規雇用者の増加を地方別にみてみると、東京圏が突出して多い。
消滅可能性自治体に挙げられたひとつ、宮崎県気仙沼。今年から人口減少対策にジェンダー目線を取り入れて改革を進めている。取り組みに参加している斉藤和枝さんは水産加工会社の専務。5人いる正社員は全員男性、パート15人は全員女性。性別にかかわらず働きがいのある職場を作るためにはじめたのが、力量表という能力評価シート。これまで曖昧だった一人ひとりのスキルを可視化した。パート歴9年目の日下美保さんは子育てのためパートで入社したが、今はフルタイムで働いている。本人の希望を聞き、新たな仕事を任せる方針を打ち出した。パート歴9か月の亘理恵さん、東京で開かれる商談会を担当することになった。
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- 気仙沼(宮城)
地域社会を土壌から変えようとしているのが兵庫県豊岡市。市内に400ある自治組織の会長はすべて男性。市は女性の声を取り入れる仕組みを作ろうとしている。自治会長の杉山隆一さんが大切にしてきただんじり祭り。女性の声を聞くと、だんじりを担ぐ男性たちに、女性たちが料理や酒をふるまう接待と呼ばれる接待が負担だと打ち明けられた。杉山さんは女性の本当の意見を出してもらいやすい場づくりから始めていかないとと思ったという。そして、接待の規模を縮小することを決めた。メンバーの半数は女性にして意見を出しやすいようにして、少人数の集まりにした。参加する女性の側にも変化があった。鳥田智恵さんは自分から声をあげて地域を変えたいと思うようになったという。
小安美和さんは地方創生と現実の溝を埋めるためには職場、地域・学校がポイントだという。職場では従業員の声に耳を傾けながら、評価をしていくことで働きがいのある組織をつくるのが大事、地域・学校では男性・女性の役割が固定的な地域がまだ残っているので対話を通しいくことが大事だという。男性・女性に選択肢がある地域づくりが大切だとした。