- 出演者
- 桑子真帆
輪島市金蔵の棚田、ゲンジボタルの群生地として知られる珠洲市北区。こうした集落は被災した6つの自治体だけで802集落、53246世帯が暮らしていた。地震の影響で大きな被害をうけ、半年たった今も復興は進んでいない。集落の復興を考えることは国土の6割を過疎地域が占める日本の今後の災害復興のあり方を考えることにつながる。
輪島市金蔵地区、今も36世帯ほどが住宅被害が大きかったにも関わらず住み続けているという。区長の井池光信さんの自宅も大規模半壊と判定されている。家のあちらこちらが崩れ、雨漏りをすることもあるが、それでもこの家で暮らし続けている。金蔵地区には500枚をこえる棚田があり、環境省の重要な里地里山に選ばれている。集落全体で維持管理を続けてきた。地震で水路などのインフラ200か所が崩壊し、何年先に田植えができるか分からないという。それでも井池さんたちは棚田を復活させたいと集落に残っている。そんな中、国の予算のあり方を議論する場では、インフラ維持かかるコストが課題になるとして、集約的なまちづくりが提言された。石川県の復興プランでは集約化については触れられておらず、被災自治体の復興計画は検討中としている。井池さんたちは独自の復興計画をつくることにした。集落中心に長く住める仮設住宅を建設してほしい、土地の所有者と交渉し無償で土地を提供してもらうことになった。しかし、輪島市の回答は対応は難しいとのこと。100年間、金蔵地区に住む竹中三郎さんは3か月前まで娘と一緒に神奈川県に避難していたが、この集落に戻りたいと意志を曲げなかった。
珠洲市の北山地区、地震の前は9世帯21人が暮らしていた。区長の小家昭博さんは10キロ離れた仮設住宅に向かう。この集落では各家庭で山の水を引いて生活していたが、地震でその水が出なくなった。水道を復興したいと役場に相談したが、個人の所有物のため原状復帰はできなとのこと。小家さんは集落の人々の復興を諦める気持ちが日に日に増しているという。ゲンジボタルが飛び交う里山として知られた北山地区。ホタルを守るために20年にわたり里山の保全活動を続けてきた。毎年2000人の観光客が全国各地からやってきていた。しかし、地震で里山は崩壊し、ホタルは見られないかもしれないという不安が住民たちに広がっている。先月行われた珠洲市の意見交換会。他の集落が復興の要望を出す中、北山地区の住民からは意見が出なかった。珠洲市の市長は行政としてできるだけサポートしたいと伝えた。北山地区にただ1人残っている仲谷内正子さん。自宅は大規模半壊したが、家族の反対を押し切って集落に残った。毎年、里山の維持管理をしてホタルを大切に想ってきた。ホタルが戻ればもう一度故郷を再生できるかもしれないと仲谷さんはホタルを探している。
故郷に住み続けたいという思いと、社会的なコストもかかる。澤田雅浩さんは社会的なコストが故郷に住み続けたいという人だけに投入されていると見れば、1人あたりにかけられる費用が大き過ぎるという意見になるかもしれない、彼らは地域に戻ることは豊かに農山村を維持することになる、社会全体が地域に戻ることでの利益を教授できるのであれば必要なコストをかけていく議論をしていくべきだとした。東日本大震災のときには復旧・故郷制作に32兆円という費用がかけられ、土地区画整理事業に約6500億円が使われたが3割の土地は活用されなかった。専門家は行政主体で住民のニーズが捉えきれなかった、過剰な工事で時間がかかり住民の気持ちに変化が出たとの分析している。澤田雅浩さんは身の丈にあった復興が必要だと指摘。人口が減っても暮らしていけるという人がいるなら環境を取り戻すための適切な復興が議論されてもいいと思うとした。
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- 令和6年能登半島地震東日本大震災
崖崩れによって一時孤立集落になるほどの被害をうけた珠洲市真浦町。半年がたった今も断水が続いている。毎日、水を汲みに行き、風呂も隣町に入りにいく生活。集落に戻っているのは23世帯中4世帯。真浦の人々は復興のために動いている。和田丈太郎さんはこの日、ボランティアからもらった給水タンクを住民に配っていた。和田さんは珠洲市内の避難所で暮らしている。時間ができるたびに、真浦に通っている。和田さんのような避難先と故郷の2拠点を行き来する取り組みは通い復興と呼ばれる。集落の復興の力になっているのが、関係人口という外から定期的に真浦に関わる人々の存在。地震の前は使われていなかった井戸の水を生活用水として使えないか調査するため、大学関係者や元水道局職員などが集まるようになった。様々なスキルを持った人が少しずつ自分の時間を割くことで真浦を復興させようとしている。他にも建築士による無料診断も行われている。地震の後、のべ50人が真浦に関わりを持つことにつながった。
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- 令和6年能登半島地震真浦町(石川)
「関係人口」は能登町の復興計画に明記されている。アイデアとしては、田植えや祭り何人が何日必要なのか人員などを数値化して足りない分を関係人口に手伝ってもらおうということ。旧山古志村でも関係人口の取り込みが行われている。澤田雅浩さんは暮らを続けることで魅力を感じて関わりたいと感じる人が増えてくれるといいと話した。金沢大学の林直樹准教授は住まなくても集落は守れるとして前向きな縮小も提言している。澤田雅浩さんは多様な選択肢があっていいとした。
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- 令和6年能登半島地震林直樹能登町金沢大学
棚田の里、金蔵地区の田んぼに苗が植えられていた。集落に残る山下祐介さんがサポートを得ながら水を運び実現させた。集落の外からの応援の声があるという。ホタルの里、北山地区に残った仲谷内正子さんに嬉しい出来事があった。里山にホタルが現れ、集落を離れた住民もかけつけた。