能登半島地震から来週で7か月になる。観光の拠点だった和倉温泉では旅館の9割がいまだ再開できていない。その理由の1つが、工事の着手に欠かせない見積もりが出せないこと。被災した企業を支援する地元の信用金庫を取材した。和倉温泉の多くの旅館と取り引きをする信用金庫。この日、報告されていたのは「工事に必要な見積もりが出ていない」という苦しい状況だった。地元には大規模な工事を請け負う建設会社が限られ、全国的な人手不足もあって、見つけ出すのが難しくなっている。信金も建設会社が出す見積もりがなければ再建後の見通しが立てられないため、融資を実行することができない。建設会社が見つかったとしても、課題はある。ある旅館は、工事に必要な見積もりが依頼して5か月以上たった今も出ていない。旅館は温泉を通すための配管やボイラー、ちゅう房など特殊な設備も破損している。専門的な知識が必要なうえ、建設会社は複数の現場を抱えているため、見積もりを出すのに時間がかかっている。旅館は営業再開のめどが立たず、従業員の雇用にも影響が出かねない状況に追い込まれていた。そうした中、旅館の経営者から信金の担当者に提案があった。雇用を維持するための新規事業として、地震後に空き家になった住宅を民宿に改築したいという。なんとしても実現させようと、信金の担当者は人脈をフルに活用して工事を請け負う建設会社を探し出し、3週間後に工事が始まった。信金が見つけ出したのが、車で1時間近く離れた建設会社。担当者の思いを受けて、引き受けてくれた。