千葉県に住む小林誠さん。息子が大学になじめず中退し、およそ10年間引きこもっていた。息子を外に出そうと小林さんは進学先や就職先を探したが、部屋に閉じこもったままの状態が続いた。息子への怒りが募り、コミュニケーションを取らないようにしていた。小林さんは息子のことは自分たちがよく分かると誰かに相談することはほとんどなかった。状況をよくしようと専門書を何冊も読んだが、答えにはたどりつけないまま長い時間が過ぎていった。引きこもり始めてから9年がたったおととし。行き詰まった状況をどうにか打開したいと足を運んだのが家族の対話型交流会だった。家族だけではなく専門家や引きこもりの当事者も参加している。さまざまな立場の人たちがアドバイスをし合うことで新たな気付きを得ることがねらい。去年11月の交流会では引きこもりの息子がいる母親が息子の行動が理解できないと話した。小林さんは休みのたびに地元以外の会にも参加するようになり、気が付いたことをノートに書き留めていった。「引きこもりを自己責任という問題にしてはいけない」「ノーと言われても親が見捨てない姿勢」。徐々に実感を強めていったのは引きこもりからの解消にとらわれ過ぎていたということだった。さらに小林さんを変えたのが交流会に向かう途中での出来事だった。息子のために何をすればいいのかが明確になった。小林さんが実践したこと。たとえ返事がなくても息子に声をかけ続けること。妻と一緒に家に笑い声を響かせること。家事を手伝ってほしいと頼るようにもした。
変化に気がついたのは半年がたったころ。その1か月後、息子は仕事が決まったと言い残し、家を出ていった。プレッシャーになるからと、大げさに送り出すことはしなかった。ずっと反応がなかったメッセージには返信が届くようになった。引きこもりの状態にある人は、推計で全国に146万人いるとされていて、その原因は一人一人さまざま。
変化に気がついたのは半年がたったころ。その1か月後、息子は仕事が決まったと言い残し、家を出ていった。プレッシャーになるからと、大げさに送り出すことはしなかった。ずっと反応がなかったメッセージには返信が届くようになった。引きこもりの状態にある人は、推計で全国に146万人いるとされていて、その原因は一人一人さまざま。