縦およそ2m、横6mの草間彌生が描いた原画をもとにした巨大な富士山が展示されている。この富士山が版画に生まれ変わり、今日の作品は「七色の富士」。数ある版画の中でも異質。赤く染まった山肌。点画に描かれた1万4000個の水玉を一つ一つ性格に再現している。和紙に重ね刷りされた顔料がじわりとにじみ、山肌の赤も。太陽の金色も独特の奥行きを生み出す。しかもこの作品は赤の他に鮮やかなピンクや鮮烈な黄色など全部で七色もある。これは異色のコレボレーションで作られた。アダチ版画研究所は江戸時代に生まれた浮世絵版画の高度な技を継承して数多くの復刻版を制作してきた職人集団。陣頭指揮をとった中山さんはMoMAで草間彌生のすごさを実感し、今までの富士山のイメージとは違うものができると期待したという。富士山は草間彌生に途方もないインパクトを与えた。そして前代未聞の作品が生まれた。