AIには好ましい面・好ましくない面がある。人手不足解消のプラス面があることが明らかだが、AIによって職を追われる人も出る。人間以上のスピードとパワーで人間がやってきた仕事の一部をこなすということはAIが悪利用されないような制度・規制のあり方も課題となる。Aiが広がった後で経済や社会がどのように変化するのかという点に関心が集まる。ただ足元の経済に注目するなら重要なのはAIの進展で企業の投資活動や資金にどのような動きが起こるのか。世界経済をAI関連の投資が牽引しているという現実がある。1990年代のITブームを思い出す人も多い。期待先行の株価高騰で実体経済での投資活動は限定的だった。この点ではAIブームは違う。特徴は技術革新に引っ張られ半導体製造やデータセンターなどの巨額の投資が行われていること。注目すべきは技術革新への期待が現在の需要を大いに刺激している点。日本経済の活性化を進めるために国内投資を刺激することがカギ。政府が積極的に関与を進める産業政策が評価されようとしている。世界の主要国で共通して見られる現象。AIへの期待を軸に世界全体で産業政策の競争は繰り広げられ日本も巻き込まれている。続いてAIの長期的な影響について考える。18~19世紀にかけて産業革命を比較対象として考える。産業革命により経済的には社会全体の生産や所得が急拡大、資本の取り分が増える所得分派の大きな2つの変化があった。肉体労働に頼ってきた仕事を技術革新で機械が引き受けることとなった。労働力が機械に代替されることで労働者の収入は頭打ちになった。技術革新の成果の大半が資本家の利益に流れ労働者には恩恵が行かなかった。19世紀にはラッダイト運動という機械を壊す運動があった。ただ1830年以降は労働者の取り分が顕著に増え始める。産業革命の議論でカギとなるのは代替と補完の概念。機械がなかった産業革命以前の労働者と比べると機械を活用する産業革命後の労働者の賃金が高くなることは自然なこと。これを労働と機械の補完性という。続いてAIによる労働者の所得への影響に当てはめて考えてみる。経済が全体の恩恵を受けることは間違えない。人手不足の日本にとってAIを活用することのメリットは大きい。ただ急速な技術革新は労働者に大きな影響を及ぼす。とくにAIによって機能が代替される労働者にとっては深刻な影響が及ぶ。全ての労働がAIと代替的ではない。AIと補完的である労働への価値は高まるはず。労働者に求められることはAIによって代替されるのではなくAIの力を借りながらAIだけではできない機能を発揮すること。ただかつての産業革命と現在のAI革命には大きな違いがある。それは変化のスピードの違い。産業革命は50~100年もの間に年月をかけてゆっくりとしたもの。AI革命は速いスピードで変化する。スピード感の中での調整は社会的な負担も大きい。労働力がAIと補完的となるためにはAIを利用する能力を向上させること・AIにはできない人間ならではの技能を磨くことが条件となる。リスキリング・リトレーニングが必要で教育や技能習得の場での制作的な支援も必要となる。
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