きょう開幕した全人代では政治や経済・社会政策などあらゆる分野において、これから1年間の方針を決める最重要会議。去年この場で首相に任命された李強氏はこれが初の演説となる。今年の重要議題はなんといっても経済政策。強気なようで危機感もにじませた演説。今年、目標に設定した経済成長率は去年と同じ5%前後だが、「その達成は簡単ではない」と中国が認めた。去年は”脱コロナ”への転換によるリバウンドがあったが今年はそれがない。加えて持続的な物価下落というリスクが有る。日本が長年苦しめられたデフレーション。すでに市民生活に現れ始めている。「朝食60円」と書かれている店に入ってみた。60円はおかわり自由のお椀の値段だった。ただ、激安なのは他の商品も同じで、4品合わせても日本円で210円ほど。こうした激安店がここ1年で急増しているという。家族連れで賑わうファミレスでも多くが200円~300円とリーズナブル。消費期限が迫った商品を半額以下にして販売するスーパーも以前はほとんど見かけなかった業態。頼みの綱も電気自動車でさえ状況は芳しくない。去年から各メーカーがこぞって新車の値引きに踏み切っている。低価格競争が激化し抜け出せなくなると、デフレ傾向はさらに加速する。事実、中国の消費者物価指数は4か月連続で下落。すでにデフレの入口に立っている可能性がある。そんな中国で今、ある種の熱視線を浴びているのが日本。「バブル崩壊を経験した日本から学ぼう」という動き。たしかに当時の日本といまの中国には共通点が数多くある。不動産大手のデフォルトが相次ぐ「不動産不況」「少子高齢化」「人口減少」「若者の失業率の急増」、全て日本がこの30年で経験してきたことと重なる。一度デフレに陥れば抜け出るまでに膨大な時間とカネを費やすことは中国政府も分かっている。一刻も早く”消費刺激策”が必要となるのか。先月、最高指導者自ら「商品の買い替え促進はより良いものを作るための対策であり、大規模な設備更新と消費財の買い替えを奨励すべき」と述べた。きょうは李強首相からも「従来の消費形態を維持・拡大しつつ、買い替えを促して新エネルギー車・電子製品など大衆消費を後押しする」との発言があった。大規模な財政出動なども打ち出す一方、全人代閉幕後の恒例だった首相会見をなくすなど、経済の先行きに自身のなさも垣間見える。3期目に入り習主席の存在感がより一層高まる中、どちらに転んでも影響が大きくなることは避けられそうにない。