中東イランの大統領選挙。イラン・ライシ大統領が死亡したことを受けて今月28日に行われる。80人が立候補を届け出たあと、イスラム法学者などで作る護憲評議会が、イスラム体制に忠実かなどを条件に資格審査を行った。その結果、6人が最終的に立候補を認められ、選挙戦が始まった。このうち5人が保守派。欧米と対立を深めてきたライシ政権と同じ保守強硬派からは、イラン議会・ガリバフ議長や国防や外交を統括する最高安全保障委員会の事務局長を務めたジャリリ氏などが認められた。一方で、欧米との対話を重視する改革派や穏健派の有力な候補者の多くは失格となった。失格した有力候補、穏健派のラリジャニ前議長は「護憲評議会が不明確な仕組みによって道を阻んだ」と非難。こうした状況について、イラン情勢に詳しい慶應義塾大学・田中浩一郎教授は「ライシ政権の路線を継承することが大統領選の目的と位置付けているのだろう」と述べ、「欧米との対話を重視する改革派1人の立候補を認めることで、一定の投票率を確保し、体制の正当性を担保したいというねらいもある」と指摘。今回の選挙の顔ぶれについて、イランの市民はどう受け止めたのか聞いた。イランは、ガザ地区の情勢などを巡り、イスラエルや米国と対立を深めている。慶應義塾大学・田中浩一郎教授は「最高指導者がハメネイ師でいるかぎり、今後の国際社会との向き合い方も変わらない」と分析し、「近隣諸国の関係改善が、ライシ政権下で進んだケースや中国やロシアとの関係が近年深まっているように見えていることは、最高指導者(ハメネイ師)との関係が密接にあるので、最高指導者の意思に反するような大幅な方針転換は、大統領では無理」と語った。中東の大国、イランの動向は気になるが、イスラエルや米国との対立の構図は続くことになりそう。日本を含め、今後も中東の緊張緩和と、安定に向けて、外交努力が求められることになる。