かつて日本経済の発展を支えた繊維産業。大手メーカー・ユニチカが、国際的な競争の激化などで赤字が続いていた繊維事業から撤退することを発表した。ユニチカ・上埜修司社長は「事業の選択と集中に取り組む。一部を除く産業繊維事業から撤退する」と述べた。中国メーカーなどとの競争激化で赤字が続いていた、祖業の繊維事業からの撤退を発表した上埜社長。会社は、第三者割当増資の形で、官民ファンドの地域経済活性化支援機構から支援を受ける予定で、機構が筆頭株主となり、会社の現在の経営陣は原則退任するとしている。繊維事業の撤退に伴って、主力銀行などは、計約430億円の債権放棄に応じる見通し。今後は需要が伸びている食品包装や半導体関連の材料に使われるフィルム事業に経営資源を集中する。かつて日本の主力産業だった繊維産業。ユニチカも主力メーカーの一角として化学繊維の輸出などを手がけ、戦後の高度経済成長を支えてきた。スポーツにも力を入れ、1964年の東京五輪では前身のニチボーが主体となって結成されたチームが出場。東洋の魔女と呼ばれた。しかし繊維産業は、国際的な競争の激化などで、1990年代以降は出荷額が落ち込むなど衣料品向けが縮小傾向。2005年には旧カネボウが繊維部門からの撤退を発表したほか、ことし9月には三菱ケミカルグループが衣服向けの繊維事業から撤退すると発表。日本の繊維産業の今後について、明治大学・新宅純二特任教授は「世界で競争できる技術を持つところが、日本にはまだ残っている。そういう所に絞って力を入れていくことが、今後の生き残りの一番重要なポイント」と述べた。