肺の感染症などの原因になる細菌「緑膿菌」は密集し、生命活動がほとんど止まった状態になると多くの抗菌薬が効かなくなることが分かったと、物質・材料研究機構などが発表した。この菌はバイオフィルムと呼ばれる密集した塊になり、酸素が不足した状態になると、活動が不活発になるとともに、薬への耐性を持つことが知られていたが、どの程度活動が低下すると耐性を獲得するのかは、詳しく分かっていなかった。日本の物質材料研究機構や米国のカリフォルニア工科大学の研究チームは、緑膿菌がエネルギーを消費する際の微弱な電気の変化を精密に計測できる装置を開発し、細菌の活動レベルを詳しく評価することに成功したと発表した。バイオフィルムの状態を再現するため、窒素ガスで満たした装置の中で、緑膿菌の活動レベルを調べたところ、エネルギーの消費が通常の1000分の1以下となり、生命活動の大部分が止まっていることが分かった。この状態では、活動している細菌に作用する多くの抗菌薬が効かなくなっていた一方で、細菌の周りにある細胞膜に作用するタイプの抗菌薬は効果を示したという。抗菌薬が効かない耐性菌への対策は世界的な課題になっている。物質・材料研究機構・岡本章玄グループリーダーは、「細菌がどのような状態になると抗菌薬が効かなくなるのか詳しく調べられるようになることで、新しい抗菌薬開発の方向性が見えてくるのではないか」と話している。