ここからは朝鮮半島担当の高野解説員による解説。キム総書記の娘はキム・ジュエと言われており、現在十代はじめとみられる。韓国・国家情報院は「娘は背が高く体格が良いという情報と一致する」としている。建国の父、キム・イルソン主席の直系は「ペクトゥの血統」と呼ばれている。キム・ジョンウン総書記は2009年にリ・ソルジュ氏と結婚、娘は2013年に生まれた長女がジュエ氏だとみられている。「ペクトゥの血統」4代目となる。ジョンウン氏が最高指導者に就任した翌年の2013年に北朝鮮に招かれたNBAの元スター選手、デニス・ロドマン氏は後日「キム・ジュエという名前の赤ん坊を抱っこした」と告白。事実だとすれば北朝鮮の指導者の幼い子供に外国人が触れることを許された前代未聞のケースだと言える。娘の姿が初めて公にされたのは2022年11月。新型ICBM「火星17型」の発射実験だった。写真には娘がキム総書記と手を繋いで歩く姿が写っている。その後、娘は軍事分野を中心にキム総書記に同行する様子が度々確認されるようになる。去年2月、軍創設75年の軍事パレードで娘の映像が初公開された。国営メディアは娘について”愛するお子様”、”尊敬するお子様”と敬称をつけ、”ペクトゥの血統”ではない母世やより先に紹介した。去年11月に空軍の部隊を訪れた際には娘が最古指導者である父親の前に立つという異例のアングルの写真が公開された。キム総書記は娘のことを「姫」と呼び周りに紹介するほどの溺愛ぶりだという。韓国では7月末に国家情報院が「娘が後継者候補の教育を受けていて、国民の反応を探りながらメディアに登場する頻度を調節している」との見方を示した。「パルコルム」と呼ばれる歌は”小さい大将”と呼ばれていたジョンウン氏の9歳の誕生日を父・ジョンイル氏が内輪で祝った席で後継者候補の1人として幹部たちに紹介した時に贈られたと言われている。ただ、キム総書記が後継者として公の場に登場したのは20代半ばになってから。それに対し娘はまだ十代半ば。北朝鮮において後継者候補がこの若さで公開されることはかつてなかった。韓国の専門家の間では権力の世襲が続くとして一族への忠誠を呼びかける狙いなどがあるとみられている。キム総書記には娘より3歳上の長男と、娘より4歳下の性別不明の第3子がいると韓国の国家情報院はみている。韓国の元国家情報院長、パク・チウォン氏は娘について「まだ後継者の道を歩んでいるわけではない。米韓の情報当局は息子がいることを把握している。社会主義国家で娘を指導者にしたことはあるか」と指摘している。高野さんが挙げる今後のポイントは「娘の偶像化がどこまで進むのか」「息子の登場はあるのか」「キム総書記の健康不安」の3点。