私たちの生活に欠かせないスマートフォン。年々、機能や使い勝手が進化しているが、その重要な役割を果たしているのが半導体。今、国のばく大な資金に支えられ最先端の半導体の国産化を目指しているのがラピダス。北海道で建設中の工場では来月から試作を始める予定で今回、その内部にメディアとして初めて入ることが許可された。日本の半導体産業は復活するのか。北海道千歳市。初めて入る工場内には埃ひとつ持ち込まないよう専用の服への着替えが求められた。クリーンルームと呼ばれる半導体製造の中枢。製造ラインに必要な最先端の装置が次々と運び込まれていた。試作品の製造には300近い工程がある。設置された中には1台500億円する装置も。国からの9000億円余りの資金を使って準備が進められている。この工場で目指すのが世界最先端2ナノメートルの回路が刻まれた半導体の量産。半導体の内部には目に見えない微細な回路が刻まれている。その線の幅が細いほど性能が高くなる。今、日本の技術で実現できる回路の幅は40ナノ。AI・人工知能、自動運転などより高い性能の半導体が必要とされる中、ラピダスは2ナノの半導体の量産を目指している。世界でまだ量産化されていない2ナノをどう実現するのか。ラピダスは大手電機メーカーのメーカーの半導体の技術者などを600人ほど採用。さらに先行するメーカーに追いつくためアメリカのIBMに技術者を派遣しノウハウを学んでいる。なぜ国はこのプロジェクトに乗り出したのか。その狙いの1つが経済安全保障の強化。かつて世界の半導体市場で圧倒的な存在感だった日本メーカー。しかし競争力が低下し、今では1割ほどのシェアに縮小。国内で使う先端半導体も海外に依存している状況。ただ、米中の対立が激化する中、サプライチェーンが寸断され半導体の調達が困難になる懸念も高まっている。こうしたリスクに対応しようと国は世界を代表する台湾の半導体大手TSMCを熊本に誘致。さらにラピダスで国産の強化を目指した。経済産業省・商務情報政策局の野原論局長は「日本の半導体関連産業が復興していく1つの核になる企業に育ってほしい」と語る。今、ラピダスにとって大きな課題となっているのが顧客の獲得。取引先が見つからなければ巨額の国費が無駄になりかねない。この日、ラピダス・小池淳義社長が訪ねたのはラピダスが技術支援を受けているIBMのトップ、クリシュナCEO。小池社長は開発が順調に進んでいることを伝えた。IBMはすでに別のメーカーから半導体を調達しているがほかの調達先も検討しているという。先行するTSMCやサムスン電子などは2ナノの量産をラピダスより2年早く今年中に開始する予定でインテルも同じクラスの半導体を量産すると発表している。TSMCはこれまでもアップルといった大口の顧客を抱えていて、現時点で顧客を持たないラピダスの参入は厳しい状況が予想される。専門家の早稲田大学大学院・経営管理研究科・長内厚教授は国による支援の必要性は認めつつもラピダスの経営上の努力がより必要だと指摘している。ラピダスにはさらに4兆円の資金が必要だとされ、国の事実上の株主になってさらなる資金支援を行っていく方針。多額の税金を投じる以上、今後、国とラピダスは成果が上がっているのかどうか国民に説明していくことが求められている。