麻酔薬が全国的に不足している。浜松市の木村産科婦人科では月に50件ほどのお産を受け入れている。このうち2割が無痛分娩だという。女性は無痛分娩を希望。木村産科婦人科・木村院長は「アナペインが製薬会社の工場の関係で出荷停止になっている」。アナペインという局所麻酔薬が供給不安定になっている。国内で販売しているのは「サンド社」の1社のみ。製造所を海外から国内へ移管する際に、設備の不具合が発生。6月から限定出荷が続き、出荷量の回復の見通しが立っていない。クリニックで使用しているアナペインの出荷量は通常の半分以下に。木村院長は「今あるこれがなくなると次がいつ入ってくるかわからない状況」。長時間作用し副作用が少ないメリットがある。他の麻酔薬で代替する場合もその薬が不足することが心配されている。浜松医科大学病院・薬剤師・田中達也さんは「通常は1本あたり1人に使用をしているが、現場で1本を複数名に分割して使用する形で運用している」。大学病院では整形外科などの手術で使用。麻酔科医・成瀬智さんは「ある程度代替できることも多いが、鎮痛力が少し弱いということと副作用がある。注射の代わりに完全になるということではない」。厚労省はアナペインのジェネリック医薬品を承認。12月下旬にも供給が始まる見通しだとしている。木村院長は「少しだけ安堵しているが、日本の医療のリスクマネジメントとして代替薬があるかないか、供給不足に1社がなったときに他の会社が作れるような体制をすぐとれるのかどうかということは国全体で考えてもらう必要がある」と話した。