南アメリカ大陸のほぼ中央部に位置する世界一広大な湿地帯、パンタナール。ジャガー研究の第一人者、ラファエル・フーゲステイン博士は乾季になるとオオカワウソの群れなどが暮らす川沿いの森でジャガーの目撃例が増えるという。体長約2メートル、南北アメリカ大陸にのみ分布するジャガーはネコ科の仲間だが泳ぐことに長けている。
博士らが観察を続けてきた推定11歳の雄のジャガー、ピラータは水中に飛び込むと約3メートルはあろうパラグアイカイマンを捕殺した。急所である喉元を適格にかつ強大な力で噛む、水中での狩りの方法を知っている唯一の大型ネコ科動物だという。しかし高齢のピラータは若いオスに餌を奪われてしまった。若く強いジャガーに追われるのが年老いたジャガーの宿命だという。
単独行動をするパラグアイカイマンはジャガーにとって最も狙いやすい獲物の1つで、乾季には限られた水辺に湿原中のカイマンが集まる。ピラータは若いオスと縄張りや餌を共用する。ジャガーはこれまで考えられていたよりもずっと社会的な動物のようだと博士は語る。
ピラータはジャガーは再びカイマンを仕留め茂みの中へと運んでいった。消化を助けるために植物を食すことがあるがこれは獲物を奪われることなく満足に食事できたことの証拠だという。ジャガーは一撃必殺の狩りを頼りに生き、その強さは世代を超えて受け継がれてゆく。