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「ジョージ・W・ブッシュ」 のテレビ露出情報

1920年代、石炭の煤と霧に塗れたロンドンは鈍色と化していた。蒸気機関車や工場は大量の煙を吐き出し、市内を流れるテムズ川には800万人分の生活排水が流れ込む。悪臭と煤煙、塵埃の漂うロンドンは留学に訪れていた作家・夏目漱石を辟易させたが、画家のクロード・モネは漱石とは対照的に「霧こそがロンドンに圧倒的な偉大さを与えている」と述べるほど黒い霧に覆われたロンドンを愛していた。
繁栄の舞台はやがて新大陸へと移り、経済大国となったアメリカでは数え切れないほどの自動車が街を埋め尽くした。自動車王、ヘンリー・フォードが産み出したT型フォードは大量生産によって価格を抑え、自動車はもはや贅沢品ではなく大衆向けのものとなった。フォードが先鞭をつけた自動車産業はアメリカを舞台に花開き、ゼネラルモーターズ社は豊富なラインナップを揃えてフォード社に対抗。競争が激化する中で、1920年代後半にはアメリカの一般家庭のうち7割が自動車を所有するようになる。自動車が爆発的に普及していく中、ロサンゼルスでは当時世界最大級だった鉄道路線の大半がゼネラルモーターズ社によって廃線に追い込まれた。こうして、ロサンゼルスは世界有数の自動車の街となったのである。
1935年、アメリカで化石燃料を使った画期的な新素材「ナイロン」が誕生する。この新素材を産み出したのは、第一次世界大戦で急成長した火薬メーカーのデュポン社。同社は1939年のニューヨーク万国博覧会でこのナイロンを使ったストッキングを発表し、発売から数日で500万足を売り上げる大ヒットを飛ばした。
第二次世界大戦が勃発すると、大量生産の技術はさらに加速していった。フォードの工場ではB-24爆撃機が1時間に1機のハイペースで製造され、デュポン社はナイロンを使って大量のパラシュートを製造。大量の軍需品が必要とされる中、安価で大量生産に向いたプラスチックは時代の主役となる。さらに、ジャングルで戦うアメリカ軍は危険な害虫から身を守るための殺虫剤「DDT」を開発。このDDTは「害虫は殺すが人には無害な魔法の粉」として持て囃され、戦後はデュポン社など化学メーカーの手によって食糧増産のための農薬として世界中に普及していった。
1952年12月、霧の街・ロンドンでは例年にも増して酷いスモッグが発生した。猛烈な寒波に備えて多くの人が家庭で大量の石炭を燃やしたことが原因で、街が歩けなくなる程の煤煙で覆われたのである。このスモッグには高濃度の硫酸塩が含まれており、スモッグを吸い込んだ人々は次々に呼吸器の異常を訴えた。スモッグによって4日間で4000人以上が亡くなったことを受け、イギリス政府は汚染を拡散する高い煙突の設置や無煙炭の利用、石炭からガスや電気への置き換えといった対策を講じることになる。
同じ頃、世界一の自動車の街となっていたロサンゼルスでも深刻なスモッグが発生していた。ガスマスク無しではハイウェイを走れなくなるほど事態が悪化するに至り、市は専門家を集めて対策に乗り出した。対策メンバーの1人、ハーゲン・スミット教授はスモッグの原因が自動車の排ガスにあると突き止め、市は大手自動車メーカー4社に対して排ガスを減らす対策を行うように要求。しかし、自動車メーカーは「科学的根拠に欠ける」として要求を跳ね除けた。
1960年代、高度経済成長を迎えた日本では工業化が急ピッチで進められていた。その一方で公害も深刻化し、大規模な石油コンビナートを擁する三重県の四日市市では住民たちが石油の燃焼による亜硫酸ガスに苦しめられた。あまりにも急速な工業化を果たした日本では公害も桁違いの速さで広がり、1970年代に入ると日本中で光化学スモッグなどによる健康問題が発生。ここに至って政府もようやく動き出し、1971年にはアメリカ・イギリスに続いて環境庁を発足させる。翌年には国連人間環境会議が開催され、医師出身の環境庁長官・大石武一が経済を優先させるあまりに環境を破壊したことの過ちを認める演説を行った。その後、日本は14の法律を制定・改正し、公害対策に本腰を入れるようになる。
1962年、アメリカで出版された一冊の本が世界に衝撃を与えた。当時癌を患っていた海洋生物学者、レイチェル・カーソンが記した「沈黙の春」である。カーソンはこの本で、殺虫剤のDDTが生態系に深刻な影響を及ぼしていると唱えた。効果が長期間続くというDDTの特徴。それは、虫が死んだ後も成分が分解されずに有害物質が生物の体内に蓄積されていくということを意味していた。しかし、デュポン社などの大手化学メーカーはカーソンの訴えを認めようとはせず、「『沈黙の春』には科学的な裏付けがない」と猛反発する。論争が激化する中、時の大統領・ケネディは農薬副作用調査委員会を設置。そして、10年後の1972年にはDDTの使用がほぼ禁じられることになった。しかし、カーソンはそれを目にすることなく1964年に世を去った。
1970年代に入り、汚染は国境を超えて拡散していった。アメリカの工場から排出された二酸化硫黄が酸性雨となり、カナダの森や湖を汚染したのである。ここまで汚染が広がった原因の一つは、ロンドンスモッグ以降主流となっていた汚染を拡散するための高い煙突だった。1980年にカナダとアメリカは共同でこの酸性雨問題に対処することに合意したが、翌年に発足したレーガン政権は単独で酸性雨問題を調査すると発表。調査チームの中には強烈な反共主義者であった物理学者、フレッド・シンガーも含まれていた。シンガーは環境保護を訴える人々を「共産主義者」と断じ、調査後の報告書で「酸性雨の影響は解明できない」と発表。レーガン大統領はこの報告書を盾に、カナダとの合意を翻した。
1988年、NASAの科学者であったジェームズ・ハンセンは二酸化炭素などの温室効果ガスが地球温暖化を招いているとアメリカ議会で報告する。その言葉通り、この年のアメリカは猛烈な熱波による旱魃に見舞われ農作物が大打撃を受けた。異変はアメリカだけに留まらず、ギリシャでは熱波により64人が死亡。アフリカのスーダンでは史上最悪の洪水が発生し、200万人が家を失った。異変が世界規模に拡大するに至り、アメリカを含んだ世界各国は地球温暖化防止に向けて動き出すことになる。1997年には京都で地球温暖化防止京都会議が開催され、温室効果ガス排出削減のための取り決め「京都議定書」が採択された。これをきっかけに各国ではハイブリッド車や電気自動車の開発がスタートし、地球温暖化防止に向けて動き出した。
しかし、1997年にはCO2の排出規制を疑問視する「ライプツィヒ宣言」が発表される。この宣言を取りまとめたのは、13年前にカナダの酸性雨は環境汚染によるものではないとしたフレッド・シンガーだった。この宣言は地球温暖化に懐疑的な企業やシンクタンクからも支持を得、2001年にはアメリカが京都議定書からの離脱を発表するまでに至る。しかし、シンガーが石油会社から多額の資金を受け取っていたことや、ライプツィヒ宣言の署名が捏造されたものであることが明らかになり、地球温暖化への懐疑論は次第に支持を失っていく。しかし、シンガーは最後まで自身の主張を曲げようとはしなかった。アメリカが再び本格的な環境対策に乗り出すのは、ハンセンが温暖化の警告を発してから33年後の2021年のことである。
2023年、国連機関は人類が地球温暖化を招いたことは疑いようのない事実であるとし、現代はもはや「地球沸騰化」の時代であると警告を発した。2023年8月の世界平均気温は観測史上最高を記録し、Co2の排出量は史上最大を記録。海に目を向ければ、現在も大量のプラスチックごみが漂っている。しかし、こうした環境破壊の一方で修復されつつあるものも少なくない。かつて懸念されていたオゾン層の破壊は原因となるフロンガスの規制によって回復しつつあり、アマゾンの熱帯雨林は伐採面積が30%減少。再生可能エネルギーへの転換も進み、かつてのロンドンを覆っていた「黒い霧」も姿を消した。100年前、環境破壊によって生み出された「黒い霧」の中で難事件に挑んだシャーロック・ホームズ。彼はかつて、次のような台詞を残した。「失敗するのは人の常だ。その失敗を認め、挽回できる者が偉大なのだ」。

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