六本木ヒルズに能登半島地震のデータ復旧を手掛けるIT企業がある。人間の手作業でハードディスクなどを修復している。この会社では東日本大震災の時には自治体のデータ、知床半島沖の観光船沈没事故では行方不明者の写真データを復旧させてきた。能登半島地震から2か月後、会社は被災地の事業者などを対象に無料のデータ復旧相談会を開いた。落下して壊れたパソコンや火災で焼け焦げたハードディスクなど、石川県の事業者から6件の申し込みがあった。依頼者の松田咲香さん。珠洲市出身の松田さんは地域情報誌の専属カメラマン。海沿いにある自宅は地震で全壊。津波の被害も受けた。仕事道具である撮影機材に加え、約10万枚の写真が入ったハードディスクも使えなくなった。松田さん自身はたまたま実家に帰省していたため無事だったが、能登のために積み上げてきたものを失ってしまった。東京のデータ復旧会社に持ち込まれた松田さんのハードディスク。津波の潮や泥を被った影響で内部の部品が劣化。パーツの入れ替え作業が続いていた。今月、ハードディスクが戻ってきた。これまで撮影した写真の6割ほどが復旧していた。松田さんが大事にしてきた故郷の在りし日の姿が蘇った。この日、写真に映っていた祭りが行われていた神社を訪ねた。境内の建物は倒壊し、祭りの道具も壊れていた。データを失いかけて改めて記録することの大切さに気付いた。かつてと違う姿になったが、故郷とこれからも向き合い、シャッターを切り続けるつもりだ。今後、復旧したデータを使い、ポストカードを制作したり、写真展を開いたりして、復興の力になりたいという。